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SS:我が心奪いし君〜ナルジの回想〜(3)
相手の返答も聞かず、ガルーダに馬乗りになっていた男の頬を思いっ切り張り倒し、次に残りの2人を蹴り上げた。
3人とも綺麗な弧を描いて空中を飛ぶと、鈍い音を立てて地面に激突した。
「ぐっ…お前は…第一部隊の…ナルジだな?俺達にこんなことをしてタダで済むと思うなよ?」
もんどりうって倒れ込んだ男達の腹を戯言を気にもせずに踏み付け
「お前は…第二部隊で議員の息子のゴーラン…と、その取り巻きか。
これは正当防衛。
今までは上手くやってきたかもしれんが、今回はお前らの親が揉み消そうとしても絶対に阻止する。
その腐った根性を叩き直してもらえ!」
俺は急いで自分の隊服を脱ぐと、ガルーダの肩に掛けてやった。体躯の違うそれは、すっぽりとガルーダを包んだ。
「大丈夫ですか?もう心配ありませんから。歩けますか?」
「…ええ、大丈夫です。ナルジ様、ありがとうございました…」
ガルーダは頭を下げると、踏み潰された薔薇をそっと拾い上げ胸に押し当てた。
その健気な姿に、胸が潰れそうになる。
俺がもっと早く待ち合わせ場所に来ていれば、こんな目には遭わせなかったのに……悔やんでも悔やみきれない。
意識を失った取り巻きを1人肩に乗せもう1人は自力で歩かせる。もう抵抗はしないようだ。
そして逃げないように、首謀者ゴーランの首にベルトを巻き付け引き摺っていく。
ゴーランは何か騒いでいたけれど、睨みつけると大人しくなった。
出来るだけひと目に付かぬように注意しながら、王宮の裏口までガルーダを送り届けると
「さ、早く。お怪我がなければよいのですが…」
「ナルジ様…助けて下さって本当にありがとうございました。
このお礼は」
「当たり前のことをしたまで。
さ、早くお行きなさい。」
ガルーダは深く一礼をすると、扉の奥に消えて行った。
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