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第6話:水狐side
それは突然やって来た。
狸の話じゃ空から小さな2人の男の子が降ってきたとか何とか
「炎狐がもう向かったみたいだがな・・・」
炎狐と言うのは私の100歳上の兄で
火を司る化け狐の事だ
まぁきっと兄の事だから「俺がお仕置してやろうかの?」とか言ってルンルンしながら行ったに違いない・・・
私は重い腰を上げ街に降りる事にした
案の定街では騒ぎになっていて妖怪達がそれを囲んでいた
見れば涙目で何とも可愛らしい。
「やめろ!離せ!!このクソ狐!!」
「ほぉーん達者な口だのぉ?儂はお前みたいなのがどんどん服従していく様が好きでな?早速連れて帰ってやろうか」
「うるせー!!何言ってるか分かんねぇんだよバケモン!!」
炎狐はどうも生意気な子供が凄く気に入ったらしい
すると袋から紫色の瓶を取り出す
あれは炎狐の毒でどんな効果があるのかは私にも分からない
ただ、ニヤニヤしているのできっと碌でもない毒であろう事が分かるのが残念だ
はて、子供には見せまいと弟顔を覆う
生意気な兄はどんどん変化して大人になって行く
それに驚いた群衆が一方引くほどだ
苦しそうな呻き声・・・
成程、そういう事か。炎狐の奴交わる気だな
確かに後々楽で良いが本当悪趣味だ
「あいつも惨いことをする・・・お辞めなさい!まだ子供ですよ!」
青ざめる子供の手を引いて連れて帰ったのを覚えている
酷く震えて居たけど下唇をギュッと噛んで
泣くのを我慢しているようだった
その健気な姿に心奪われて守る事を誓ってから
とりあえず慣れて貰おうと色んな事をした
まずは胃袋を掴む事から!
小さな子供は大抵ハンバーグが好きと聞いて
わざわざ下界まで買いに行ってます。
帰れないとか嘘ついてごめんね
本当は返したくなくなっちゃったんだ・・・だ、だって可愛いんだもん!!
子供が突然消えたならそれは神隠しかも知れませんねってよくあるじゃありませんか・・・
はい、その類なんです。まぁ御札剥がしちゃったのはイツキ達なので誘拐したって怒られませんよ
ははは
そして次はよく遊ぶ!
色んな事をしました・・・例えば私の術で水遊びしたり宙に浮かせて散歩したり
寝る前には本も読みましたね。おかげで3年がすぎる頃には
「水狐!水狐!今日はカレーがいい!あ、俺狸のオッサンと釣りする約束してたから行ってくる!!」
「あ、でも水狐が1番好き!だから心配しないで!行ってきマース!」
と中々妖怪ライフを楽しんでいるみたい
唯一の誤算と言えば狸にも懐いてしまった事。
それでも水狐が1番好き!って言うその言葉だけでここまで育ててきました。
気付けばイツキも二十歳・・・
最近は厭らしい匂いが充満するようになってきて遠くからでも妖怪が狙いに来るようになってしまいました
「おい水狐・・・このままじゃいつの日かイツキは攫われちまうかも知れねぇぞ?いっそ俺が食ってやろうか」
「このおバカさん、もう少し様子を見たって・・・」
「その結界だって意味あんのか?なぁ、俺はイツキも水狐も食べたって構わねぇんだぜ?昔みたいに狂わせてやろうか」
「っ!わ、私はもう貴方とはしないと・・・」
狸は腰をグイッと引き寄せる
真剣な眼差しが私の目を捉えて離さない
「水狐・・・お前が狂っちまっても俺だけはずっとそばに居る。昔俺が掛けた術で毎夜辛いってんなら謝るし1人でそれに耽ってるお前を俺は見てられないぜ」
「バカ狸!この術貴方が掛けたのですか!!しかも毎夜って変態!この最低な術解きなさい!」
「あぁ必死な顔も可愛いな・・・もっと凄いの掛けてやろうか?ほら手始めにココ」
ひいっ!
服越しに押し付けてくるな!この変態糞狸!!
「あのさーそれいつ終わんの」
ムスッとした顔のイツキがドアからひょこっと顔を出す
「イツキ・・・お前って奴はこれからがいい所だろ」
狸ははぁっとため息をつく
そして釣り行くかーとその場を去ってしまった
ポツンと残された私は少し乱れた胸元を治す
あんのエロじじぃ許さん
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