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「あ、どうも、死神です」
チャキッと立ち上がって、丁寧にお辞儀をする。
「死神?」
「お迎えに来ました」
目を細めてニッコリ笑う。
「野上晃太 君でしょ?」
自分の胸ポケットから小さな二つ織りの
カードを取り出して、中を見る。
「はぁ」
「もう時間だよ、早くしないと体に
戻れなくなる」
「え…」
「このまま死んでいいの?」
「………いや、アナタ死神って言いましたよね?」
「うん」
「何で助けるって?
ってゆうかそんな事できるの?」
「できるから言ってるんでしょ?」
「……俺、このままだと本当に死んじゃうんだ…?」
「そうだね、だから俺が来たんだよ」
ウオオオォとAV男優のような声を上げて
男がやっと力尽きた。
どうやらこの男には俺たちの声も姿も
見えていないらしい。
「終わっちゃったよ、どうする?」
「………」
「え?悩むとこ?
こんな恥ずかしい、つまんない死に方
嫌でしょ?」
「ヤダけどさ…もう死んじゃったしなぁ…
これから死ぬよって言われてたら、助けて!って
言ったと思うんだけど…苦しいとか痛いは
終わっちゃったし、もういいかなぁ…」
「は!?そんな感じ?」
「…俺の人生なんてさ、どうせ先が見えてるし
別に終わるなら終わってもいいかな…」
携帯で俺の脱け殻の写真を、バシャバシャ何枚も
撮る男をボンヤリ見つめた。
「ダメ!」
突然大声で叫ぶ死神を驚いて見つめた。
「生き返りたいって言わなきゃダメ!」
「…え?アナタ何なの?」
「いいから言え!」
ー なんかめんどくさ…
「イ、イキカエリタイデス…」
めんどくさくなった俺は、もう、どっちでもよくなって
言われた通りに言った。
「よし、それには条件がある!」
「………何なんだよオマエ、自由だな…」
死ぬか生きるかという一大事に
幼稚園児のような死神をよこさないでほしい。
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