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黒い髪に、健康的に色づいた肌。
自分と同じ東洋人の顔は、丸顔で童顔だった。
年齢を当てはめるなら20代半ばから後半頃
だろうか?
中肉中背といった対格で、何かスポーツを
していそうな、引き締まった体つきをしている。
ー うん、嫌じゃない。
全然いける
「ねぇ エッチって今からするの?」
「えっ!?」
死神が驚いて軽く後ろに身を引いた。
「約束でしょ?」
「き、今日はいいよ!
オマエ体痛いだろ」
「まぁ…え、でも、じゃぁいつやるの?」
「分からない!でも…準備が出来たら
連絡する!」
「あ、そう」
死神は慌ててベッドから立ち上がった。
「とりあえず今日は、荷物まとめてさっさと家に
帰りなさい」
「……ハイハイ」
言われたまま、俺は脱ぎ散らかされた服を拾って
着た。
死神はそんな俺の様子をソワソワ見守っている。
「連絡って?携帯とか?」
「いや、会いに行くから」
「え、居場所が分かるの?」
「まぁ…」
「へえ、便利だね~」
俺は準備が終わり時間を見た。
11時になるところだった。
「じゃぁ帰るけど…」
そう言って振り返ったら
死神はもうそこに居なかった。
俺は驚いて部屋を見回した。
ー 夢でも見てたかな?
そうだ、冷静に考えれば、死神があんな普通の
人間みたいな姿で現れて、あの世に連れてく
どころか助けてくれるなんて…。
あまりに自分に都合が良すぎる。
ー まぁ 夢でもいいや。何でもいいや。
俺は男の置いていった財布から現金を小銭まで
全部出してベッドに広げて数えた。
「82,562円!」
ガッツポーズをして、現金だけ自分の財布にしまい
他のものには手をつけずに部屋を出た。
帰り道の川に、カードや免許証の入った財布は
投げて捨てた。
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