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俺は立ち上がって、帰る準備をはじめた。 「もう帰るの?」 「ああ、今日は早く帰れって言われてるんだ」 「そっか…」 「また明日な」 「……うん死神に気を付けてね」 ユイが冗談ぽく笑いながら言った。 「そうだな、気を付けるよ」 俺は1度振り返って手を上げてから、教室を出た。 死神は夢じゃなくて本当にいたのかな? 日常に戻ってみると、ますます現実と思えない。 絞められた首の痛みも、苦しさも、全て消えて しまったし、もう一度会うまでは死神の存在を 自分ですら信じられない。 ー 本当に現れるのかな? いつ現れるのかな? 準備ってなんだろう? でも、その日死神が現れる事はなかった。 ・ ・ 翌日、いつものように体育館の裏でパンを 食べようとすると、また千里が現れた。 「今日もここいい?」 そう聞かれると、断る理由がない。 別に昼飯を食べるだけだし。 「好きにすれば」 俺は素っ気なく応えた。 素っ気ない俺の態度など気にする事もなく 千里は昨日と同じようにお弁当箱を出して 俺の隣で食べはじめた。 彩も綺麗で、何だか凝っていそうなお弁当。 「いつもお洒落な弁当だな」 「母親の趣味みたいなもんだからね」 千里は誉められた事を嬉しそうにも、煩そうにも しないで答えた。 「卵食べる?」 「…え?」 「好きだったじゃん、小学生の時」 「よく覚えてるな」 「ほい」 千里が箸にだし巻き玉子を刺して 俺の前に突き出した。 反射的に俺はそれをパクッと食べた。 「…ウマイ」 「そ?よかった」 千里は何事もなかったように また続きを食べ始める。 いきなり距離を詰められた気がして、ドキッと したのは俺だけだったようだ。 千里はそれから毎日、お昼になるとやって来て 一緒に昼食をとるようになった。 大して会話をするわけでもないし、一緒に食べようと 約束しているわけでもないから断るのも変だなと 千里の好きにさせていた。 困ったのはユイだ。 俺はユイと話すために、人の来ない場所を探して ここで食べるようになった。 それを邪魔されてユイはとても怒っていた。

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