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3. 新しい君ひとつ

ユイはやきもちやきで、俺が誰かと 仲良くしているとむくれる。 だから突然現れるようになった千里が 疎ましくて仕方ないようだった。 ユイの為、俺はカフェのバイトがない日は学校に 残り、話す時間を作るようになった。 そうして2週間ほど経った頃、思い出したように 彼は現れた。 「こんばんは」 深夜、気持ちよく眠っていた俺の顔を至近距離で 頬杖をついて眺めていた。 危うく大声で叫びそうだったのをギリギリで こらえた。 咄嗟に飛び起きて、部屋の反対側のベッドで 寝ている弟を見た。 直哉はこちらに背を向けてグッスリ眠っていた。 「あ、彼は起きないから大丈夫だよ」 「え?」 「深く眠ってもらってるんだ」 「………あ、そう」 少しずつ頭が落ち着き始めて、心臓も静まって いく。 「…やっぱりいたんだ?」 「はい?」 「…あれは夢だったのかな、と」 「ああ、なるほど。…いました」 死神は子供みたいな顔で笑って、ベッドの端に座った。 あの日と同じ全身真っ黒のスーツ姿。 「…で? ヤりに来たの?」 「隣に弟が寝てるのに、こんなとこで できるわけないでしょ!」 なぜか死神が赤くなって怒る。 「でも起きないんでしょ?」 「そういう問題?」 「……さぁ」 「……イヤイヤイヤ!絶体に無理!」 死神が真っ赤になった顔を両手で覆う。 「何1人で興奮してんの?」 「興奮してないし!」 ー 何なんだこの乙女は… 「じゃあどうすんの?」 「明日!」 「…明日?」 「明日ホテルに行こう!」 「………マジで?」

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