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「もう一回……」
言葉とほとんど同時にまた唇を重ねられ
今度は息を乱して、肩に強くしがみついてくる。
右に左に角度を変えて、ついばむように
キスをされ、俺がタロウの腰に腕を回すと
さらに夢中になって、俺の唇を吸った。
タロウの開いた口の中に舌を差し込んだ時…
ピンポン… 呼び鈴の音が静かに響いた。
二人でドアを見つめる。
「…ルームサービスきたね」
「う、うん」
タロウを膝の上から下ろして、手の甲で唇を
軽く拭った。
すっかり呼吸の上がったタロウの代わりに
俺がドアを開けた。
ウェイターは、男二人がダブルベッドの部屋に
泊まっているのを、見てはいけないものを見て
しまったと思ったのか、黙々と注文したモノを
置いて、なるべく視線を合わせないように、
部屋を出ていった。
「旨そう~食べよ食べよ!」
何事もなかったようにソファーに座って
タロウの分のパスタを取り分けてやると
タロウは戸惑いながらそれを受け取った。
「あ、さすが!めっちゃウマイ!」
俺につられるように、タロウもパスタを口に運んだ。
「…ホントだ…ウマイね!」
「な!」
二人でがっつくようにして食べた。
マナーも何もなく。
ピザもパスタもサラダも、全部旨くて
直前までの甘い空気は吹っ飛んだ。
「コレ、初めて食べたけど
毎日食えるな、俺」
ー カルボを毎日食えるって言うヤツ
初めて見た。
「初めて?」
「うん!まぁ人間の体の時しか食べ物なんて
食べないし、食べたくもならないからな」
「………死神はずっと死神なの?
例えばさっきの死者みたいに、昔は人だった
んじゃないの?」
「……分からないんだ記憶がなくて…
ただ…過去に、とても重い罪を犯したから
だから死神にされたんだって」
「重い罪…」
「重い罪なんて人間しか犯さないよな…
だからやっぱりずっと昔は人だったのかも」
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