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5. 温もりと憎しみ

月曜になればまた、すべてが夢だったように思えた。 いつものように校門でユイが笑顔で待っていて 週末の話を聞きたがり、俺も変わらずそれを 無表情で受け流す。 靴箱の前で、少し人目を遮る物ができてから 放課後な、と返す。 ユイも他の皆には見えない死者だ。 だから普通に話したら、俺が独り言を言っている ようにしか見えない、だからユイとは人目の無い ところでしか話せない。 学校に思いを残していて、学校からは出られない から外で会うこともできない。 俺がそっけない態度しかとらないと 分かっているのに、それでも門で待っているのは きっと夜1人きりだったのが寂しかったから…。 ユイから怖いことや、嫌な事をされた事はない。 最初は暗く、その辺を徘徊してるだけだった。 俺から、なんでずっとここにいるの?って 話しかけたのがスタートだ。 それからユイは友達の少なかった俺の 親友みたいな存在になった。 最近ではもう昼休みは話せないと諦めてるようで。 文句も言ってこない。 でも千里の事を良く思っている訳ではないのは 感じていた。 「金曜日ありがとう」 「いいよ、別に何もなかったし」 昼休み、いつもの場所で千里と昼食を取りながら 話した。 「ホテル楽しんだ?」 ー ん? 「……俺、ホテル行くなんて言ったっけ?」 「え?いや、ごめん彼女とお楽しみなんて ラブホかなって…勝手に思っちゃった え、違うの?」 「ああ、そういうこと? するどいな、実はそうなんだ」 「やっぱり!?」 「近々なんかおごる!」 「マジ?やった、名前貸しただけなのに」 「いつ暇?俺、平日は火、水以外だったらいいよ」 「じゃぁ今日は?」 「おお、いいよ」 ー 千里、昔と変わらないな…。 行くと決めたら、予定を先伸ばしにするのが 嫌いなんだ。 たぶん彼にとっては “いつか” と言ったら 実現しない予定の事になるのだろう。

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