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6. 僕を認めて
「ゴメンお待たせ」
ポテトを食べながら参考書を見つめる
千里を見つけて、後ろから肩を叩いた。
「いいよ」
千里は口の端で笑った。
目の前の席に座ってすぐにメニューを開く。
「腹減った~ 何食おうかな~」
「俺、もう決まってるよ」
「まじか。暑いから冷製パスタにしようかな」
「え?そんなのあった?」
「あるよ。ここに。メニューちゃんと見た?」
「ホントだ!うわ旨そう~」
「千里せっかちだからパッと見て、適当に
決めたんでしょ?」
俺の言葉に千里が顔もあげずに笑った。
「俺にせっかちなんて言うのお前くらいだよ」
結局二人で同じものを注文して、食べた。
「これももらっていい?」
ポテトを指差して聞いた。
「もちろん、だって晃太の奢りだろ?」
「後でデザートも食う?今月はリッチだから
何でも食ってよ」
「カフェのバイトってそんな貰えるの?」
「………いや、今月は臨時収入」
「…へぇ~」
腹を満たした後はドリンクバーで繋いで
試験勉強に集中した。
分からなくなれば、すぐ千里に聞ける。
千里は教え方が上手い。
下手な教師より分かりやすいと思う。
「なんか俺、久しぶりに、こんなに試験勉強
やったかもしれない」
2時間ほど集中して休憩にデザートを注文した。
「マジかよ、余裕だな」
「違うよ進学するつもりがないから
平均点さえとれればいいって…そんな感じ?」
「……進学…大学行かないの?」
「ああ、金かかるし…俺、養子だろ?
大学行きたいなんて言いにくいし…
どうしても行きたいって言えるほど目標もないし
さっさと就職して、早く一人暮らししたいんだ」
「………そっか」
幼馴染の千里は、だいたい俺の家の事情を知ってる。
だから深く突っ込まれる事もなかった。
「あ、そうだ。今週末、俺んち来ない?
試験前のラストスパート。嘘を本当に
しちゃう感じでさ」
「…泊まりでってこと?」
「そう」
友人の家に泊まるなんて小学生の頃以来だ。
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