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「俺はいいけどさ、千里いいの?
俺がいると逆に勉強できないんじゃない?
あれこれ聞いちゃうしさ 俺…」
「全然。教えるとスッゲー記憶に残るから
復習になっていいよ」
「あ、そ…じゃぁ行こうかな…」
「ん、じゃぁそういうことで…今日は
そろそろ終わりにする?もう結構遅いし」
「ホントだもう8時過ぎてるじゃん」
「うん、晃太 電車?」
「おぅ!千里もだろ?」
「なんか一緒に電車乗るとか超久しぶり」
「そうだな」
電車では他愛もない話しを続けた。
テレビやゲームの話し、担任が英語の補助教員と
イチャついてた話し。どれもどうでもいい事。
俺たちは同じ駅に降りて、そこからは逆方向へ
別れて歩き出す。
千里の事は小学校から知っているせいか
話し出したら、やっぱり話しやすくて楽しい。
久しぶりにこんなに喋ったな、と思った。
何気なくポケットに手を突っ込むと
学校でタロウにもらったお守りが手に握られる。
帰り道にある、住宅に囲まれた小さな公園に
入っていって、コンクリートでできた、象の形の
滑り台に座った。
「……フーッ」
言われた通りに、お守りに息を吹きかける。
ー どうなるんだろう
「呼んだ?」
すぐに後ろから声がして、振り返るとタロウが
滑り台の上に座っていた。
「ホントに来た!」
「晃太、さっき会ったばっかりなのに
もう会いたくなったの?」
タロウが照れたように目を反らす。
「どうなるのか試しただけだけど…」
「あ、そう…」
「これ、スゴいね!いつでも使えるの?」
「もちろん」
「タロウが寝てたらどうなるの?」
「………晃太、死神は寝ないから…」
「あ、そうか寝るのも食べるのも人間の
体になってる時だけか」
「うん」
「用もなく呼び出してごめんね
何かあったら呼ぶ」
「うん…さっきみたいな…危ないときもね」
「……うん…分かった」
「せっかく会ったし…チューでもする?」
「外で?」
俺は回りを見渡した。
暗い公園の中は誰もいない。
「俺、今誰にも見えないから
最悪誰かに見られても平気だよ」
タロウが滑り台を滑ってきて、下に座っていた
俺の背中にくっついた。
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