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不思議だけど…実体がある時よりも
感覚が鋭くなった気がする。
脳が麻痺して、このままタロウに溶け込んで
行きそう。
「晃太…ありがと…」
名残惜しそうに離れる唇。
「……じゃぁな」
タロウの手が離れると、俺は慌てて歩き出した。
このまま居たら、今度は俺が“もう一度”なんて
口走りそうだった。
振り返らないで帰る。
タロウがどんな顔で俺を見てるのか
見ないで帰る。
タロウは死神のくせに怖くないし、人間臭くて
一緒に居ると変な気持ちになる。
怖くない…タロウはそもそも
本当に死神なんだろうか?
特別な力を持っているのは間違いないけれど
死神らしいところなんてひとつもない。
いや、死神らしいってなんだ?
わからないけど…きっと、もっとずっと怖い…。
ー 教室で…タロウはユイに
何をしようとしたんだ…
振り返って見ると、タロウの姿はもう公園には
なかった。
ユイはあの時、脅えてた。
ユイは何を感じたんだろう…。
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