37 / 140
7. 2
「どうして?」
「そのドアが怖かった…死神はその先に何が
待っているのか、何も教えてくれなかったし…
過去を忘れるのもやだった…。
でも、逃げたって言葉は正解か分からない
本当の意味で俺たちは逃げる事なんてできない
もしかしたらある程度選択する余地が
与えられてるのか…
単に気まぐれで放置されたか…
分からないまま、今の状態になったけど
アイツらはその気になれば何時だって
俺たちをあの部屋へ連れていく事ができるんだ
昨日気づいたよ」
「 全部捨てたくて死ぬことを選んだんじゃないの?
それなのに忘れたくなかったの?」
ユイの目から涙が溢れだした。
延々と止めどなく。
「…ゴメン、ユイ」
ゆっくり首を振るけれど、涙は止まらない。
「俺、昔この高校に通ってたんだ。
美術の先生を好きになって、先生も
俺を好きだって言ってくれた。
先生は既婚者だったけど偽装結婚だって
本当に好きなのは俺だって…」
「それって…まさか相手は…」
「…うん…男の人」
言葉が出なかった。俺は ただ眉を寄せた。
「高校を卒業してやっと教師と生徒じゃ
なくなったって思ったのに、先生はそう思って
くれなかった。
先生は少しずつ俺から距離をおいて、最後は
さよならも言わないで連絡がとれなくなった」
「ひどいな…」
「ね、俺ずっと不安定でさ…
ゲイになってしまった事だって、誰にも相談
できなくて毎日ハゲそうなほど悩んでた
支えてくれるのは先生だけだったのに
捨てられるって思ったら、頭メチャクチャで…
先生の家を調べてピンポン押しちゃった」
ユイが泣き笑いで言った。
ハンカチでも貸してやりたかったけど
ユイの涙は頬をつたって、床に落ちる前に
消えていく。
「奥さんに全部ぶちまけてやったんだ
学校で何度も先生に犯されたって。ド修羅場。
そしたら先生何て言ったと思う?」
俺は首を振った。
「コイツ、頭おかしいんだっ…て」
ともだちにシェアしよう!