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「どうして?」 「そのドアが怖かった…死神はその先に何が 待っているのか、何も教えてくれなかったし… 過去を忘れるのもやだった…。 でも、逃げたって言葉は正解か分からない 本当の意味で俺たちは逃げる事なんてできない もしかしたらある程度選択する余地が 与えられてるのか… 単に気まぐれで放置されたか… 分からないまま、今の状態になったけど アイツらはその気になれば何時だって 俺たちをあの部屋へ連れていく事ができるんだ 昨日気づいたよ」 「 全部捨てたくて死ぬことを選んだんじゃないの? それなのに忘れたくなかったの?」 ユイの目から涙が溢れだした。 延々と止めどなく。 「…ゴメン、ユイ」 ゆっくり首を振るけれど、涙は止まらない。 「俺、昔この高校に通ってたんだ。 美術の先生を好きになって、先生も 俺を好きだって言ってくれた。 先生は既婚者だったけど偽装結婚だって 本当に好きなのは俺だって…」 「それって…まさか相手は…」 「…うん…男の人」 言葉が出なかった。俺は ただ眉を寄せた。 「高校を卒業してやっと教師と生徒じゃ なくなったって思ったのに、先生はそう思って くれなかった。 先生は少しずつ俺から距離をおいて、最後は さよならも言わないで連絡がとれなくなった」 「ひどいな…」 「ね、俺ずっと不安定でさ… ゲイになってしまった事だって、誰にも相談 できなくて毎日ハゲそうなほど悩んでた 支えてくれるのは先生だけだったのに 捨てられるって思ったら、頭メチャクチャで… 先生の家を調べてピンポン押しちゃった」 ユイが泣き笑いで言った。 ハンカチでも貸してやりたかったけど ユイの涙は頬をつたって、床に落ちる前に 消えていく。 「奥さんに全部ぶちまけてやったんだ 学校で何度も先生に犯されたって。ド修羅場。 そしたら先生何て言ったと思う?」 俺は首を振った。 「コイツ、頭おかしいんだっ…て」

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