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ユイは1度、ため息とともに笑った。 いや、笑おうとしたけど、涙は溢れて 結局泣き顔のまま俺を見つめ、コクリと頷いた。 「晃太はいずれここを卒業して居なくなる それまでは一緒にいたかったけど… これ以上いたら、きっと俺は俺を止められなく なっちゃうんだ…それが怖い。 そうなって晃太に嫌われるのも、 ちゃんとお別れが言えないまま誰かに 消されるのも、全部怖いよ」 「うん」 「だからもう逝くね……」 「…うん」 「ちゃんと輪廻の輪の中に戻って いつか晃太と同じ時代に生きられるように…」 「……うん」 俺は握手をするために、立ち上がって近づいた。 俺が右手を出すとユイは両手を広げて、ゆっくり 確認するように俺の体をハグした。 タロウとも違う…完全にそこには何もない。 俺もユイの背中に手を回して抱こうとしても 雲のように何も掴めない。 ユイがしたように、俺もゆっくりユイの形を 目で確認しながら空気を抱いた。 ユイは嬉しそうにクスクス笑った。 「晃太ありがと。大好き」 「俺もユイが居てくれて良かった …ありがとう」 「いつか、また会おうね…!」 俺の腕をふわっと すり抜けてユイが数歩離れた。 「バイバイ」 声変わり前のような高めの少年の声を残して 急ぐようにユイは姿を消した。 「ばいばい………」 気づいたら俺も泣いてた。 ・ ・ これは後の話だけれど…… 俺は夏休みに入ってから、時間をかけて調べて 生前のユイを見つけた。 そして彼のお墓を見つけ、手を合わせることが できた。 今はどうしているのかな? 辛い罰を受けているのかな? それとも償いは済んで、どこかで新しい生を 授かっているのかな? ………いつか本当に会えたらいいね。

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