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8. 境界線

週末、約束どうり、千里の家を訪れた。 千里の家は俺の家から自転車で10分ちょっとの 距離にある。 入院設備もある大きな眼科に隣接した大きな家。 「これアキ子さんから…」 「おぉ…ごちそうさまです」 今回は和菓子の詰め合わせだ。 千里がうやうやしく頭を下げながら受け取った。 「ちゃんとお礼言いたいけど、今日 母親 実家に帰っちゃってるんだよね~ ばあちゃん調子悪いらしくて」 「そうなんだ」 「だから今日は夜デリバリーだな、悪い」 「全然、大丈夫」 「俺の部屋覚えてる? 飲み物持ってくから先に上がってて」 千里に上を指差されて、了解、と相づちをうち 広めの階段を一人で登った。 古い洋館のような作りの千里の家は、階段の上まで 吹き抜けになっていて、天井には映画で見たような シーリングファンがくっついていた。 千里の部屋は階段を上がって一番奥の扉だ。 懐かしさを感じながらドアを開けた。 ドアを開けて思わず吹き出した。 そのドアを開けるまでは、カタログのように 完璧な豪邸だったのに、豪邸に似つかわしくない よくある高校男子の荒れた部屋が現れたから。 「その辺座って」 後ろから千里が2リットルのペットボトル2本と 駄菓子を持って入ってくる。 「エアコン効きすぎじゃない?」 俺が笑いながら言うと、だな、と笑って 温度を上げる。 千里の部屋は散らかっているけど広い。 おそらく10畳以上ある。 システムベッドに学習机、サイズは大きくないけど テレビもソファーもあって、そのソファーの前に 丸いローテーブルが置かれている。 千里が言った、その辺とは、きっとその ローテーブルの前の事だろう。 俺はソファーの下に座った。 「相変わらずだな千里の部屋」 机に雑然と置かれた雑誌や教科書、漫画を 積み上げて横に置こうとしたら、ゴメンと 笑いながらそれを受け取って、本棚にしまう。 「なんか気づくと部屋が荒れてるんだよな」 千里のマイナスポイントを見つけられて 俺は嬉しくて笑った。

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