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「イヤイヤイヤ、ないない!」 千里は手のひらをブンブン振って 笑いながら顔を背けた。 「そう?」 俺は特にくいさがる事もなく、シャワーを浴びる 準備をして浴室に向かった。 今さら何照れてんだ? 小学生の時プールの度に素っ裸で着替えて ふざけてアレを引っ張りっこまでした仲だ。 中学の林間学校や、修学旅行でも 一緒に入ったのに…。 風呂から出て暑かった俺は、パン1でタオルだけ 被ってリビングへ戻った。 「お待たせ~」 俺の姿を見て千里が目を反らす。 「じゃ、じゃぁ俺も入ってくる ……あ、エアコン適当に調整して あ、あと、もしピザ来たら、これで払って」 カウンターの上に千里がお金を置いて 慌てたようにリビングを出ていった。 ー 変なヤツ… 千里が風呂から出てきた頃ちょうど ピザが届いた。 ピザにパスタにサラダに…この前タロウと 食べたのと同じメニューだ。 タロウに食べさせてやりたいな…。 そんな事を思った。 食べながら、テレビをつけていたら 少し前に流行ったBLのコメディドラマの 再放送が始まった。 そのドラマが始まったら、急に千里が慌てだし リモコンを掴んでチャンネルを変えた。 俺はその慌て様をあっけにとられて 見つめた。 「………千里ってさ、ゲイなの?」 非常に聞きにくいけど、耐えられず聞いてしまった。 「はっ!?」 「だってさっきから変じゃん」 「へ、へ、変じゃねーし!」 「別に俺、そういうの気にしないよ だからもしそうなら、早めに教えといて」 「ちっ…違っ!俺じゃなくて!晃太が……!」 千里が立ち上がって大声で叫んだ。 「……俺?」 訝しげな俺の表情に、千里は言葉を詰まらせた。 「俺がゲイだって?何で思ったの?」 二人の沈黙をよそに、テレビでは賑やかな お笑い番組の笑い声。 「………見たんだ」 「何を?」 「…晃太が…おじさんと……ラブホに入るの…」 一気に身体中の毛穴が開いて汗がにじんだ。 「は? いつ?」 しらを切ろうか、正直に話そうか 頭がフル回転する。 「6月の半ば頃かな? 俺、予備校の帰りで…偶然」

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