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心臓の音が聞こえる。 タロウを見てた? あの時ロビーに居た? 「晃太…あの日は楽しそうだった…。 それで…声かけられなくて… あれも…ウリ?」 「あ、あたりまえだろっ」 咄嗟にそう言うしかないと思った。 死神だなんて言っても信じるわけないし どこをどう嘘をつくべきか考えもまとまらない。 それに、利益の有無のない状況で、喜んで男と エッチしてるなんて思われたくなかった。 「あいつは、くれる金額も多いし上客って 感じで…でも、もうとにかく全部終わったんだ もうやらないから、心配しないで!」 無理やり会話を終わらせた。 千里はもう、俺が話す気がないことを 悟ったように黙った。 「…ほ、ほら…そろそろ片付けて勉強しようぜ! あんまりゆっくりしてると眠くなるし」 「……ぉおお!そうだな!やろうやろう!」 千里は、空気を変えようとする俺に のってくれた。 ガチャガチャと食べたものを片付けて 二人で千里の部屋に戻って勉強を再開した。 でも俺は勉強なんて全然集中できなかった。 千里に見られてた事はショックだった。 今すぐタロウを呼び出して、千里の記憶を消して もらおうかと真剣に考えた。 「千里…あのさ…」 「…ん……どれ?」 俺が分からない問題を聞こうとしていると 思った千里が俺のノートを覗く。 「あ、違う。 さっきの話しなんだけど…」 「……うん」 千里が身構えるように俺を見た。 「誰にも言わないでくれる?」 「………なんだ、そんな事か 言うわけないじゃん」 「はは、そっか…さんきゅ」 「そのかわりマジでやめろよ。 これでも幼なじみとして心配してるんだ」 「うんうん、大丈夫」 「もっと…なんかあったら俺に話してよ できることあるか分からないけど…」 「…うん」 千里は真面目だ…。 おそらく本当に誰にも言わないし、今のところ 千里に知られたところで何も問題は無さそうだ。 タロウに頼むほどの事はないだろう。 それに、俺の事を真剣に心配してくれる千里に ちょっと感動していた。 その思いを消したくないとも思っていた。

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