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「っふ、そうだよね」 「まぁ、いろんな奴がいるから 人間とおなじで… 悪魔みたいなのもいるのかもね」 「俺はタロウに会えてラッキーだったんだね」 「……晃太がそう思ってくれて良かった」 どういう意味?と聞こうとした時、廊下を パタパタと音をたてて駆けて来る音が聞こえ 野上いる?と声をかけながら、クラスメイトが トイレを覗いた。 「おぅ いるよ」 「もう終礼始まるから、探してこいって担任が…」 「ハイハイ、すぐ行くよー」 言いながら俺はタロウを振り返り、うなずいた。 タロウも分かった、と言うように頷いて返す。 俺は友人と話しながら教室へ戻った。 体の熱は冷めていたけど、タロウの吐息や 声が耳に張りついて離れない。 中途半端に刺激された前も後ろもジンと 痺れたみたいで、俺はそれを振り払おうと 芸人のお笑い動画を見ながら帰った。 意地をはらず、一回出しとけばよかったな… なんて、アホな後悔をしながら。 ・ ・ 「今日、終わったら地下鉄乗って」 翌朝門の前にタロウがいた。 以前のユイのように満面の笑顔で。 ー 地下鉄? 人目を気にして返事のできない俺を無視して タロウは一方的に、待ち合わせ場所と時間を 告げて消えた。 俺の通う高校は最寄り駅が2箇所ある 俺の通学路では、地下鉄を利用する事はない。 それに地下鉄は苦手で避けていた。 なぜか地下鉄には死者が多い。 干渉してこない者もグロテスクな風貌の者が多くて 子供の頃は見て嘔吐した事もあった。 地下鉄は嫌いだ、と言う前に行ってしまった…。 まぁ、たちの悪い奴に会ったらタロウを 呼び出せばいいか、と、それについてはすぐに 考えるのをやめた。 とりあえず目の前の期末だ。 テスト週間がやっと終る。 そうしたら、ゲーム三昧、バイト三昧の夏休みだ。

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