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10. 6
「好きっていうか…千里ちょっと…」
首に回された手をほどこうとすると
千里は、ますますその手に力を込めた。
「ダメなんだっ…!
おまえが男とヤってるの
我慢できないっ」
ー ……… どういう意味?
鼻がぶつかる距離で見つめあって
お互いの動悸が伝わりそうだ。
状況が読めないまま、千里のベビーフェイスが
近づいて目が閉じられた。
「やめて千里」
考える前に体が動いた。
俺はギリギリで顔を背けて、静かに言った。
千里は それがスイッチになったように
俺の両腕を痛いくらいの力で掴んで、ベッドに
つきとばした。
すぐに俺の上に股がってきて
今度は俺の顔を両手でガッチリ捕まえて
乱暴に口を重ねる。
何の色気もないキスだった。
拒もうともがく俺の唇を必死で捕らえて
噛みつくように、何度も角度を変えて
舌を這わせる。
「せ、せん…やめ…」
手で顔を隠そうとして、暴れるその両腕を
千里が捕まえてベッドに縫い付けた。
薄暗くなった部屋に二人の
荒い呼吸だけが聞こえる。
目を反らしたら負ける、猫のケンカのように
二人でにらみあった。
俺を見下ろす千里の目は、完全に理性がぶっ飛んで
いつもの冷静で優しい彼ではない。
「千里…落ち着いて…」
「黙って」
千里がもう一度キスをしようと顔を寄せる。
それがスローモーションのように見えて
抵抗するのをやめてそれを受け入れた。
ー もういいや。どうせ記憶は消せる…。
そんな風に、どこか投げやりな気持ちで。
千里の舌が口の中に遠慮がちに侵入して
舌が絡まり、俺が抵抗しないと分かると
千里は押さえつけていた腕を離して俺の首筋を
そっと撫でた。
湿った音と共に唇を吸って、俺が千里の厚めの
唇を甘噛みすると、トロリと目を開けて
俺を見つめる。
その目をじっと見つめ返すと千里の視線が泳いだ。
俺は思わず笑ってしまった。
「………で? この後どうすんの?」
千里の顔は明らかに動揺していて
俺は指導権を握ったと感じた。
「俺は最後まで付き合ってもいいけどさ
千里、俺で勃つの?」
短パンの上から、千里の股間を強めに握る。
千里が腰を引いて、うっ 、と声を上げた。
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