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11. 5

窓から差し込む薄明かりに起こされた。 後ろから巻きついた腕が、はだけたガウンの中に 突っ込まれていて、俺の腹筋を撫でている。 ー あれ…?昨日…どうしたっけ… 額を撫でながらボンヤリ昨日の夜の記憶をたどる。 体はキレイになっているようだ…。 シーツも…。 エアコンは止まっていて、タロウとくっついてる 肌が汗ばんでいた。 エアコンをつけようとリモコンに手を伸ばしたら 反射的にタロウの腕に力がこもって、俺の腰を ぎゅっと掴まえた。 「タロウ…暑い…」 「ん~…ん?」 寝ぼけた顔で頭を上げて、辺りを見回す。 それからハッと気づいたように手を離した。 「あ、ごめん」 「あっつ~」 エアコンをつけて、ついでにトイレに立った。 老人にでもなったように、緩慢な動きでトイレに 座った。 ー あれ?ナカもキレイになってる? 部屋に戻って、ベッドで微睡むタロウの肩に 頭をのせて、手も足も巻き付ける。 「タロウ昨日俺を洗ってくれたの?」 「…うん…ナカにいっぱい出しちゃったし… 汗とか…あれとか、それとかベットベトで…」 「…だろうね…。 重かったでしょ?ありがと」 ふっくらした頬にお礼のキスをすると 目を閉じたままタロウが笑った。 時計を見るとまだ5時だ。体もダルいし… このままタロウにくっついて2度寝したい。 でも現実の世界に戻らなきゃ…。 俺はため息をついて起き上がると 帰る準備を始めた。 「もう帰るの?」 タロウが頭だけ上げて俺を見る。 「うん、無断外泊だ。 アキ子さんが起きる前に帰りたい」 ー どうせ怒られるだろうけど 「ごめん…来てくれてありがと…」 「やめろよ。俺が来たくて来たんだから …それに…最初にすっぽかしたの俺だし… そういえば、花火どうだった?見れた?」 「うん。すっごくよく見えたよ。 晃太にも見せたかったな…」 「…ごめん。一緒に見れなくて… 言い出したの俺なのに…」 着替え終わって、ベッドに座ると タロウも伸びをしながら起き上がった。 「晃太が帰っちゃって最初は淋しかったけど 花火一緒に見ようって言われた時の事とか 色んな事思い出してたら、ここが温かくなって 意外と平気だったよ」 そう言いながら握った手で、トントンと軽く 胸を叩く。

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