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千里は目が覚めたようにハッとして 軽く頭を振った。 「あ、ゴメンなんかボーッとしてた」 「大丈夫?」 「…うん、熱中症かな?ちょっとクラっとして…」 「暑いし、行こうか?あの店こむし」 「おう!そうだな」 二人で立ち上がって歩き出す。 チラッとタロウの方に視線を送ると 手を振って、行ってらっしゃい と微笑んでいる。 俺は千里に気づかれないよう小さく頷いた。 「俺今日歩いてきちゃったから乗っけて」 「いいよ」 千里が自転車の鍵を開けていると 消えたと思っていたタロウが突然駆け寄ってきて 俺の首に腕を巻き付けた。 え?と驚く俺を無視してタロウが唇を寄せ 俺の頬を唇で柔らかく噛む。 痛くない程度に優しくつままれた感覚は すぐに離れた。 「またね」 スルッと巻き付いていた手も離れて タロウの気配は消えた。 「晃太?どうした?」 「いや、何でも…」 ハッとした俺は千里の自転車の後ろに股がった。 回りをもう一度見回したけど、タロウの 姿はもうどこにもなかった。 ー 今のってヤキモチみたいだった… 他の男と出かけていく俺に ささやかなアピール。 ドキドキして、勝手に顔がにやけた。 同時に昨夜の身体の感覚も甦る。 千里の自転車の後ろで、上の空で会話をしながら 昨夜のタロウの吐息を思い出してた。

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