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12. 5

夏休みが終わって、元の学校生活が戻ってきた。 俺たちはいつもの体育館 裏でお昼を食べて 人目を気にしながら時々キスをしたりして ちょっと歪んだ青春を満喫していた。 俺がゴロンと横になると 千里も一緒に横になる。 体育館と植栽の隙間に、小さな青空が見えて 目がチカチカした。 隣で千里が自分の腕をパシッと叩く。 「ヤバい蚊だ!」 「刺された?」 「分かんない」 千里が起き上がって、仕留め損なった蚊を キョロキョロ探した。 「暑いし教室戻ろうか」 俺も起き上がって、持ってきた物をまとめた。 「……うん」 千里も同じように荷物をまとめる。 思えばもう、ここでお昼を食べる理由はなかった。 湿気っぽいし、薄暗いしお昼を快適に食べるには むいてない ユイがいなくなった今ここに来る理由は無い。 「明日からさ、ホールで食おうよ」 「…え?」 「ここ蒸し暑いしさ」 「……ホール人多くない?」 「まぁね…どっちかの教室でもいいし」 「…うん。了解」 何か言いたげな表情のまま千里は頷いた。 ・ ・ 「え?まだエッチしてないの?」 千里が塾の日は、だいたいタロウのマンションに 来ていた。 学校とバイトの後でそれなりに疲れているのに 家には帰らず、わざわざタロウに会いにくる 理由は、もう自分では分からない。 体の欲求を満たす為だけなのか… もっと、別の理由があるのか…。 「ヤる場所がないんだ」 「ホテル行けば?」 「…千里は真面目なんだ。 そんなとこ入る勇気なんて無いよ」 「晃太が誘ってあげれば? 誘われたら行くんじゃない?」 「嫌だよ、ってゆうか何でタロウ 俺と千里をヤらせようとするわけ?」 「二人が本当はヤりたがってるから」 思わず俺は、ベッドからガバッと起き上がった。 「勝手に決めるな!」 「えぇ~?あれ?違うの?」 「別にやりたくないし! だいたいさぁ、ヤる相手なんて一人で十分 なんだよ!無駄に罪悪感 感じながらこそこそ ここに来てる俺の気も知らないで 勝手なこと言うなよ!」 「…晃太…意外に良い子なんだね…」

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