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12. 6
俺はムッとした顔のままベッドを下りて
脱ぎ散らかした服を探した。
「晃太、帰るの?」
「もう遅いし明日も学校だし… 」
「じゃぁタクシー呼ぶよ」
最近は帰りは毎回タクシーで帰る。
当然のようにタロウがくれるお金を使っているけど
どうやってタロウがお金を作っているかは
知らない。でも、ちゃんとした方法でお金を
手に入れてないことは、何となく分かっていたから
特に聞いたりもしなかった。
タクシーで帰るときは実体のないタロウも
一緒に乗って、近所の公園まで帰る。
運転手にはタロウは見えていないから
会話はできないのだけれど
俺が左手をダラリと座席の上に投げ出すと
タロウがその上に、そっと自分の右手を重ねる。
指を絡ませてぎゅっと握って、目だけ合わせて
こっそり笑い合う。
そんな瞬間が結構好きだった。
俺は心のどこかで、こんな日々がずっと
続くのだろうと思ってた。
いつか大人になって、普通に結婚したり、
子供ができたりしても…。
こんな風に時々会って、密かに欲求を満たして
なに食わぬ顔で、俺は また家庭に戻るんだ。
タロウは絶対にバレることのない
完璧な愛人になってくれるだろう。
俺もきっと今感じているくらいの
わずかな罪悪感しか感じない…
いや、もしかして、大人になったら罪悪感すら
感じなくなっているのかも…。
そんな風に自分に都合の良い未来を
勝手に想像して、ニヤついたりしていた。
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