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「…やっぱりさファミレス行こうよ…」 俺の言葉に千里が何か言おうと口を開いたけど それを無視して近づいて、そっと手を繋いだ。 「大事な話しをするのに ラブホは無いだろ」 近い距離で目をじっと見つめてそう言うと 千里は諦めたように目を反らし、ため息 混じりに笑った。 恋人繋ぎで握った手も、伏せられた千里の睫毛も 細かく震えて… 俺は千里が泣くんじゃないかと思った。 それまでは面倒になったら、最後の手段で タロウに記憶を消してもらえばいいと 適当に考えてた。 でも千里の真剣な顔を見てたら、そんな気持ちは どこかに消えた。 千里がこんなに一生懸命、俺に向きあってくれて いるのに、適当にあしらうなんてできない。 俺も逃げずにちゃんと話さなきゃ。 そう、今まで逃げてたんだ。 千里の気持ちからも、自分の気持ちからも…。 「実はさ…気になってるヤツがいるんだ」 「え?」 期間限定のカボチャモンブランを 食べて、ドリンクバーで時間を繋ぐ。 「男なんだけどね、もう社会人の…」 「………」 「正直、どういう“気になる”なのかは 自分でもよく分からないんだけど」 「それって…その…」 千里が言葉を探して視線をさ迷わせる。 「…うん、もうエッチはしてるんだ 最初はウリがきっかけで会ってたけど 今はもうお金はもらってない スタートがそんなだからワケわからなく なっちゃってさ、そのままズルズル…」 俺は明るい声をつくって、タロウの事を話した。 彼が死神だという事だけはふせたまま。 「………相手は?」 「え?」 「相手は何て言ってるの? 好きとか嫌いとか…これから晃太とどうなりたい とか…まさか既婚者じゃないよね?」 「結婚はしてないよっ 好き…とは言われてるかな?」 「……それって信用できるの?」 「……え?」 「出会ったきっかけが そんなでさ その人…晃太みたいな相手がいっぱい いるんじゃないの?」 考えた事もない事を突っ込まれて、 思わず固まった。

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