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「晃太…ずっと一緒にいる…」 「………は?」 「晃太が死ぬまで…一緒にいる…」 寝ぼけた頭にこの状況で、この言葉。 もう、全然頭が回らない…。 「意味分かんないタロー…」 「仕事しない。 そうしたら死神のままいられるから」 ー 死神じゃなくなるのは…いい事のはず… なのに…俺の人生につき合って… それを棒に振る…? 「……タロウ…オモイ…(色んな意味で)」 「あ、ごめ…」 タロウが物理的な意味だと捉えて 体を少し離した。 「そうじゃなくて…」 真っ暗のベッドで、ほとんど見えない顔を 見るために顔を近づける。 潤んだ目が微かな光を反射して、そこから 表情が浮かんで見える気がした。 頬を両手で挟んでみても、手のひらの感覚が 鈍ったように、実体のないタロウは掴み処がない。 「タロウは俺の顔が見えてるの?」 「うん、見える」 死神の目には暗いとか明るいとか 関係ないんだ…。 「……タロウ…」 「…ん」 「あんな事言っちゃってゴメン 俺、自分の事しか考えてなくて…」 ひそひそ話す声が弟に聞こえてしまいそうで 気になって、チラチラタロウの向こうの ベッドを見た。 「……明日行くよ。明日ゆっくり話そう 今は頭も回んないし、アイツも気になるし」 視線で伝えると、タロウは、分かったと頷いた。 起き上がって、ベッドから下りるタロウの手を 握ると、タロウが振り返って、なあに?と口が 動き首を傾げた。 「…来てくれて…ありがと」 照れて顔は見れなかったけど タロウが凄い決断をして来てくれたのが 単純に嬉しくて、それはどうしても伝えたかった。 俺の言葉にタロウは、いつものように素直に喜んで 上半身を起こした俺に、ふんわり抱きついてきた。 「風邪ひかないでね、晃太」 そう言って、頬にキスして消えた。 まさかさっき公園で追って来なかったのは 俺が寒そうだったから? ー まさかな… 何にしても…タロウは俺の事を大事に思って くれている。 そう思うのは俺の自惚れではない。 それが実感できて、心の中の重苦しさが ウソみたいにあっさり消えた。

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