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「クリスマスに遊園地行きたいんだって」
「いいね、青春って感じ」
俺は携帯を千里に返した。
「毎日おはようとか、おやすみとか
連絡するの、新鮮だよ」
千里がニヤニヤ笑って携帯を眺める。
「そっか…」
「……ビックリした?」
「まぁビックリしたけど…いいじゃん
いつから?」
「1週間くらい前かな?」
「そうか~ …そうだよな…
千里もともとモテたしな。
今までいなかったのが不思議なくらいだよな」
俺の言葉に千里が視線を反らしたまま笑った。
「そっちは?クリスマスとかどうすんの?」
「う~ん…キリスト教じゃないからな~
それに男同士でイベント事そんなに
盛り上がらないよ」
ー 死神がクリスマスってなんか笑えるし
「そうだよな、ごめんごめん」
「まぁ普通に会ったりはするだろうけど
特に何かすることもないよ
そっちは遊園地楽しめよ!青春してこい」
「おぉ!」
千里は、はにかんだような笑顔で笑ってた。
心配して損したな。ここしばらく千里の言動が
気になって、あれこれ考えていたけど、そんな
必要なかったみたいだ。
千里は新しい一歩を踏み出した。
それが正しい。
俺がタロウにハマるのとは訳が違う。
可愛い女子とキャピキャピ、にゃんにゃん
するのが青春だ。
マスターベーションの延長で、俺と抜きあってた
事なんてさっさと忘れた方がいい。
良かったな千里。
平和で、健全(?)な学生生活に戻れて。
俺はホッとしたような
自分だけ取り残されてしまって
寂しいような…。
胸の奥で沸き上がる感情に気づかないフリを
するのに必死だった。
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