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バイトの後、いつものマンションで いつものベッドの上で 素っ裸に寝具を巻き付けて タロウとイチャイチャふざけながら なんとなく切り出した。 「千里さ…彼女できたんだって」 「ふぅ~ん…」 「知ってたの?」 「まぁ…知ってたような…?」 「何?その中途半端な感じ」 「千里君から言ってきたの?」 「うん」 タロウは、いつになく真面目な顔になって そうか…とつぶやいた。 「タロウが脅かすから、心配したけど 千里は大丈夫みたいだな ホッとしたよ。これで本当に友達に戻れる」 「……そ」 タロウはちょっと悲しそうにも見える 優しい目で笑った。 「クリスマスに遊園地行くんだって 浮かれてた」 「へえ~いいなぁ遊園地…」 「死神でも、そんなとこ行きたいの?」 「クリスマスは、正直どうでもいいけどさ 遊園地は楽しそうだなぁ… ジェットコースターとか、どんな感じなの?」 「俺、あんまり絶叫系は得意じゃないけど… 行きたいなら今度行こうよ」 「えー!ホント!?いいの?」 タロウの顔が輝いた。 さっきの沈んだ顔がウソみたいに。 「いつだっていいよ。今度の休みでも」 言いながらタロウの首に手をまわす。 「本当に、ホント?」 チュッと音をたててキスをした。 花火を一緒に見ようと誘った時を思い出す。 あの時もタロウは無邪気に喜んでた。 結局一緒に見れなかったのに、タロウは 一言も文句を言わなかった。 「ホントだよ絶対に行こう」 「俺、あの足ぶらぶらで回転するやつ乗りたい」 「うぇー…1発で吐きそう」 「あとね~後ろに進むやつ」 「おまえ、絶叫系ばっか…」 正直自分の体調が心配になったけど 楽しそうなタロウを見てたら、こっちまで 嬉しくなって、つられて笑った。 「んーーー」 寝具ごと腰をギュッと抱かれて 熱烈なキスをされる。 「…したくなっちゃった」 唇が触れあったままで、タロウが囁く。 「…ウン…オレも…」 もう一度唇を吸い合って、舌を絡ませて タロウが俺に巻き付いていた寝具を剥ぎ取った。 タロウの手に俺の体が溶けていく。 この感覚に俺は完全に溺れていた。

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