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17. 君が笑えば

その週末、早速 遊園地にくりだした。 久しぶり…いや、初めて?の タロウと外出だった。 思えばタロウとはヤってばっかだ。 電車に揺られている時間も 手も繋がず体に触れ合わずに、こんなに長い時間を 一緒に過ごすのも初めてで、最初は気まずい感じも あったけど、タロウは始終楽しそうだった。 何気ない会話の間、いつもの癖で髪や手に 触れそうになるのをギリギリで止める。 そんな時、同じ事を考えているのか、自然と 目があって言葉には出さずに一緒に笑った。 遊園地は想像以上に混んでいた。 そして、死者の数も多かった。 無害なタイプからしつこいタイプまで。 見つける度にタロウがサクサクと追い払って 俺が不快にならないように気づかって まさに番犬の様な働きぶりだった。 「追い払うのも疲れない?」 40分待ちのコースターに並びながら 忙しくあちこち目を光らせるタロウに聞く。 「今は体があるから疲れるけど 大した事ないよ。でも体がなければ もっと 効率がいいから、ちょっとイラつくかな」 「タロウでもイラつくんだ」 俺は思わず笑ってしまった。 「俺、短気だよ。今もアイツ…もう3回目だよ 超イラつく…。 追い払ってもしばらくすると現れて…。 体がなければ1発で消せるのに…ごめんね」 「何で謝ってんの?いいよ。ほっとこ 今のところついて来るだけだし タロウがいるのに悪さなんてできないし」 着いてすぐに、大柄の真っ黒の影を拾ってしまった。 なんとなく嫌な空気を出していて タロウがすぐに追い払った。 でも気づくとまた戻ってきて、ずっと俺たちの 後をついてくる。 俺たちはコースターの乗り場へと続く階段の上から その影を見下ろした。 「こんなにしつこいの珍しいよね 全く見ず知らずじゃあないのかもなぁ…」 俺がボンヤリそう言うと、タロウが指先を 口に当て、それを止めた。 「考えない方がいい。本当にそうで アイツと記憶が繋がったりしたら、突然姿を 変えるかもしれない 俺、今は100%の力で守ることはできないから 晃太もなるべく隙を作らないで」 「あ、う、うん…」 あまり見せない、タロウの眉を上げた凛々しい 表情にキュンとしてしまった。 男に守られてキュンとする女子ってこんな感じか …って、俺は女子か! 俺はのぼせた頭を必死で振り払った。

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