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18. Crossed the line ※
クリスマスはタロウとケーキを食べ
一緒に過ごした。
その日は友達とパーティーをして、そのまま
泊まるということにして、ゆっくり2人きりの
時間を楽しみ、遅くに眠りに落ちた。
深夜、眠る俺の耳に携帯の振動する音が
聞こえて薄く目を開けた。
サイドテーブルの上で携帯が光って
震えている。
「ハイ、もしも……」
誰からか確認もしないで
半分寝ぼけたまま出た。
(晃太、寝てた?)
「ああ、うん…千里?」
(…うん、こんな時間にごめん)
「いいけど…どした?」
俺は一瞬携帯を耳から離して画面を見て、時間を
確認する。
(今、家?)
「いや……違うけど…」
(そうだよな、ごめん)
「なによ、謝ってばっかじゃん…」
(いや、ホント邪魔しちゃってごめん
また新学期な…)
「え?なんか用があったんじゃないの?」
俺の言葉が終わる前に電話はきれていた。
「どうしたの?」
タロウが心配そうな顔でこちらを見てた。
「さぁ? よくわかんなかった…」
俺は携帯を元の場所に置いて、羽毛に潜り込んだ。
タロウが俺を暖めるように包み込む。
「千里、今日彼女とお泊まりのはずだけど…
ケンカでもしたかな…」
「もう一度電話してみれば?」
「今日はいいよ、また明日にでもかけてみる」
俺がタロウの胸に顔をすり付けると
くすぐったそうにタロウが笑った。
「あったかい」
「うん」
触れるだけのキスを何度か繰り返して
またトロトロと微睡みの中に落ちていく。
心配は心配だったけど、後回しにしたのは事実だ。
今この瞬間ほど大事な時間なんてなかったし
自分の事を解決するのは結局自分だ。
あらためて話を聞いてやればいいと
思っていた。
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