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18. 2
翌日連絡してみたけど、千里は出なかった。
その日に折り返しもなかった。
“彼女とケンカでもした?大丈夫?”と
メッセージだけ送り、後日 “まぁそんなとこ” と
返事が来た。
“愚痴だったらいつでもきくよ” と
送ったけど、それに返事は返ってこなかった。
そしてそのまま3学期が始まった。
新学期が始まって、千里はいつもと変わらない
様に見えたけど、少し痩せた気がした。
そして、いつもどこか素っ気なかった。
どこがどうと聞かれたら答えにくい…。
普通に話すし、今まで通り、昼食だって一緒に
食べている。でも…。
クリスマスの日の事も聞いてみたけど
もう大丈夫、とだけ言われて、詳しい話しは
聞けなかった。
本人が大丈夫と言うのだから、それ以上
突っ込んで聞くこともできず…。
なんだかぎこちないまま新学期が始まって
初めての週末、千里に家に来ないかと誘われた。
例によって、ご両親は不在。
その日の千里はご機嫌で、つまらない事でも
よく笑った。
今までも変だったけど、今日はもっと変だ。
無理してはしゃいでる。
俺は耐えられなくなって、夕食を食べながら
ついに千里に聞いてみた。
「最近ちょっと変じゃない?」
千里は最初、テレビを見るふりで答えようと
しなかった。
「千里、俺でよければ話し聞くよ」
テレビの方を見て、こちらに背を向ける
千里の斜め後ろの頭に向かって話しかけた。
「そうだ! ちょっと待ってて」
俺の言葉には無視で、突然千里が立ち上がった。
キッチンに入って行って、ガチャガチャ何か
用意している。
俺はそんな千里を横目にため息をついた。
俺には話したくないのか…。
そう思って聞くのはもうやめようと思った。
その俺の目の前にグラスがドンと置かれる。
「え?」
白い泡の黄金色の飲み物。
「ビール!飲んだことある?」
「あるけど…一口、二口くらいだよ…」
「俺、最近親が居ない時 毎日飲んでる
最初は旨いと思わなかったけど、だんだん
はまっちゃってさ!」
「……千里らしくないな」
言いながら一口飲む。
カーっと喉が熱くなった。
俺が足をジタバタさせて、アーっと声を上げるのを
千里が面白そうに笑って、じっと俺を見た。
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