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18. 5

・ ・ 気だるさの中、目を覚ました。 後ろから俺を抱きしめるように、千里の腕が 俺の腰に巻き付いている。 二人とも素っ裸でひとつの布団の中に丸まって お互いを暖め合うようにくっついて寝ていた。 辺りはまだ暗い。 何時だろう?と、頭だけ上げて部屋の時計を 凝視すると、千里がすぐに気づいて 俺に巻き付けていた腕に力をこめる。 「どこ行くの?」 「どこにも…何時かなって思って…」 千里が枕元から自分の携帯を取って見る。 「4時前だよ」 「……あ、そ」 千里が俺の首に唇を押し当てて、吸い付いた。 「見えるとこは跡つけないで…」 千里の動きが止まって、下の方に唇が滑って また、チューっと音をたてて吸い付く。 チリチリとした痛みを感じて、キスマークを つけられたんだと見なくても分かった。 「トイレ…」 俺が起き上がると、千里も一緒に起き上がった。 「立てる?」 「……ん、とりあえず…」 まだ、ふわふわ感覚がおかしいけれど 立てない程じゃない。 フラフラ裸のまま歩き出す俺に千里が ちょっと待って、と声を掛けて 振り返ると、その辺にあったフリースの パーカーを俺の肩にかけた。 「寒いから」 「…ありがと」 洗面所の鏡で体を見ると、いくつもの 赤い跡が開いたパーカーの隙間から見えた。 俺にパートナーがいると知っていて こんな事をする千里の心の底を思うと、憐れで やめろと言えなかった。 千里は優しくて、真面目で争い事も嫌いだ。 本当はこんな事するヤツじゃないのに…。 部屋に戻ると千里の姿はなく、あれ?と 思うのと同時に、後ろから足音が聞こえた。 手にはペットボトルがふたつ。 「はい、これ」 「ああ、さんきゅ…」 「あの薬、喉渇くから」 「試したのかよ」 「当たり前だろ」 言いながらまたベッドに寝転ぶ。 俺はペットボトルが未開封か、わざと大袈裟に 確認してみせた。 「もう盛らないから安心しろよ 目的は果たしたし…」 千里はスッキリした顔で笑ってた。 「俺、途中から意識朦朧としてあんまり 覚えてないけど、ヤったんだよな?」 「…ヤったね」 「……そっか」 「怒ってない?」

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