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18. 8

「……疲れたっ」 俺の耳元で千里が漏らす。 肩で息をしながら。 俺はフフっと笑った。 「やっぱ、あれだね… セックスは起きてる人間とやるもんだね」 「いや、意識無い奴とヤったことないから 知らないけど。薬盛るとかサイコ」 「それ言うなよ、悪かったと思ってるって」 千里は起き上がって、後処理を始める。 「とりあえず気が済んだ?」 俺が渡されたタオルで体を拭きながら軽く言うと 千里が俺の腕をグッと掴んだ。 「俺、別に性欲だけでここまでした 訳じゃないからな?」 俺の目を睨むようにして、千里が言う。 「晃太、うまくはぐらかすつもりだろ? 俺は俺なりに覚悟を決めてお前と寝たんだ ごまかすのやめて」 「……ごめん」 千里はクリスマスから今日までの苦悩を 俺にぶちまけた。 彼女に勃たなかったこと。 ゲイになってしまったのかと不安になったこと。 考えれば考えるほど、俺に触れたくなったこと。 でも俺には相手がいるから 俺は友達だから この一線を越えるわけにはいかないと 抑えるのに必死だったこと。 「考えすぎてハゲそうだった。 メーター振り切ったら、もういろいろ どうでもよくなって、最終的には、とりあえず 晃太と本当にヤれるのか知りたくて こんな事……」 「まぁ、ヤったことはともかくさ 千里がハゲなくて良かったよ」 千里がうつ向くから、俺はあえてふざけたことを 言った。千里はおそらく俺の気持ちに気づいて 少しあきれたように笑った。 「俺さ、ゲイの動画とかも見たんだけど 全然興奮もしないし、むしろゲンナリだった でも晃太とはできたね…」 「………」 「晃太には悪かったけど、今回の事で自分の事が ハッキリ分かったよ。 俺はやっぱり晃太が好きなんだ」 薄明かるくなった部屋で、千里が目に涙を にじませて笑ってた。 「せんり…」 「…だから晃太……たのむ… 恋人と別れて……」

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