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19. 3
“恋人と別れて”と千里は言った。
おまえが他の男とヤってるの想像したら
吐き気がするんだと。
実際冬休み後半は食欲もなくなって、
吐いてばかりいたと。
「俺を選んで、晃太」
あんな目で、あんな声で言われたら
突き放せない…。
もう一度、タロウに記憶を消してもらおうか
でも、そんなに何度も大丈夫だろうか?
そもそもそれが解決に繋がるんだろうか?
俺?俺の記憶を消す?
いやいや、さすがにそれは無いや。。
もう、どうしたらいいか分からない。。
考えても答えなんて出ない。
ベッドに寝たまま天井を眺め続けた。
疲れているはずなのに、ちっとも睡魔は
やってこなかった。
・
・
「今日放課後どうする?」
「え?」
まるで一緒に過ごすことが決まっていたように
千里が言った。
ランチタイム。
多くの生徒が集まっているホールの、中心に近い
テーブルに陣取って弁当やパンを食べていた。
「今日はバイトない日でしょ?俺んち来る?」
「いや、今日は……」
今日はタロウのマンションに行くつもりだった。
なんだかんだ1週間は会ってない。
「……彼と会うの?」
食べ終わった弁当箱を雑にしまいながら言う。
答えに困って黙りこむと、千里が笑った。
「分かりやす!晃太って嘘つけないよね~」
「何も言ってないじゃん」
「言えないってことは、正解ってことだろ?」
「どうだろね…」
「別れ話!俺、立ち会おうか?」
冗談なのか本気なのか分からない顔で笑いながら
千里が俺を見つめる。目は全然笑ってない。
目が反らせない。
その時本気で千里が怖いと思った。
「千里、そうゆうの しんどい…」
俺は一言だけ呟いて、席を立った。
言われた千里は呆然とテーブルを見つめたまま
固まってしまった。
堪えられなかったんだ。
千里の気持ちを理解しようと、歩み寄りたい
気持ちはあるものの
俺だって辛い。
とにかくもう少し時間が欲しかった。
そのどっち付かずの時間が
千里にとって苦痛だったとしても。
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