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「晃太 待って!」 自分の教室へ戻ろうと階段を登っていると 千里が追いついてきた。 なりふり構わず俺の手首を掴んでひき止める。 「ごめん!言い過ぎた」 「千里、見られるから、とりあえず離して」 すれ違う生徒がチラチラ見ている。 手を離して、なお近い距離に一段上がって 不安げな顔で俺を見る。 「ごめん、ウザいよな… もう言わないから…本当に…」 「…いいよ、別に怒ってるわけじゃないから」 あんな一言で、こんなに取り乱すような人間じゃ ないのに…。1回(?)やっただけでどっかのネジが 一本ぶっ飛んだんじゃないだろうか? 「本当?」 「本当」 「……じゃあこのまま屋上行かない?」 「? 鍵かかってて出れないだろ?」 「いいから、いいから」 俺の肩をポンポンと叩いて そのまま一段飛ばしで駆け上がっていく。 仕方なく俺も後を追った。 屋上のドアは、ドアノブにそのまま鍵を差し込む タイプの古い鍵で施錠されている。 危ないという事で、生徒だけで出入りするのは 禁止されていた。 千里はポケットから短い針金のような物を出して 鍵穴に差し込み、何度か上下に動かすと、いとも 簡単に鍵を開けて見せた。 「え、マジ? すげぇ」 「思った以上に簡単に開くんだ 後で晃太にも教えてあげる」 千里は悪い顔で笑って、1度階段の下を覗きに戻り 誰も来ていないことを確認してからドアを開けた。 一瞬太陽の眩しさに目がくらんで真っ白になり 思わず目の前に手をかざす。 千里がその腕を捕まえて、1月の寒空の下に 俺を引きずり出した。 閉まったステンレスの古いドアを背に 千里が壁ドン状態に俺を追いこんでキスをする。 「ちょ、千里っ…」 俺は誰か、どこかから見てるんじゃないかと 不安で千里の口を手でふさいだ。 その行動が、俺がキスを拒んだと勘違いして 千里の目がまた暗くなる。

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