117 / 140
20. 6
「…… へ?」
間の抜けた変な声が出た。
俺たちは自然と、誰も居ない、いつもの公園に
入っていた。
「…何言ってんの? どういう意味?」
「ずっと思ってたんだ。晃太の事を真剣に
想って大切にしてくれる人が現れたら
俺は消えなきゃいけないって
晃太はさ、バレないからって、大切な人を
裏切るような事を、平然と続けられるような
図太い神経してないんだよ」
「それ…ほめてるの?」
「誉めてるよ。晃太は優しいから」
タロウが目を細めて笑った。
俺はその笑顔を受け止められず目を反らした。
「やめろよ、優しくないよ
俺自分の都合ばっかりだ」
「それでいいよ。
俺は最初から居ない者だから
もとの生活に戻るだけ…」
「やめろって!
勝手にいなくなったりするなよ?
俺はまだ何も決めてない!
どうしたらいいか考えてるんだから!」
タロウがシーっと指を口の前に当てて
回りを見た。
「声大きいよ、一人で公園で騒いでるって
近所の人に通報されるよ」
普段だったら冷静さを取り戻す一言だったけど
今日は無理だ。
ほっといたら本当に勝手にいなくなりそうで
俺はタロウに、にじり寄って腕をにぎった。
「ホントにっ!勝手に居なくなったら
許さない!死んでやる!」
俺の言葉にタロウが目を丸くした。
「晃太、落ち着いて
なんて事言うの…っ
居なくならないから…」
俺はポケットの中に手を突っ込んで
タロウを呼び出す巾着があることを確認した。
「晃太、大丈夫!
黙って居なくなる訳ないでしょ」
タロウがフワッと俺の体をだきしめる。
背中に回された手がポンポンと背中を撫でた。
「今度さ…花火やろうよ
ウチのベランダでさ…」
話を変えようとしたのか、タロウが突然
突拍子もないことを言い出した。
「…こんな季節に花火なんて売ってないよ…」
「そうなの?
じゃぁ俺探すよ
見つかったらやろうよ
約束!」
「………いいけど」
「やったぁ」
タロウがフニャッっと目尻を下げて笑った。
俺も次の約束をしたことで、ホッとして
つられて笑ってしまった。
でも、何で花火だったのか
俺はもっと深く考えるべきだったんだ。
ともだちにシェアしよう!