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千里が傷つくのが嫌だから ……なんて言えない。 なら、何で他のヤツと会うんだと言われそうだ。 「嫌がってもするんでしょ?」 言いながら、今度は本当に服を直した。 こんなカッコしてたら本当に風邪ひく。 「晃太…気になるなら…それ…彼に見せないで」 「………そうだよね」 ベルトをカチャカチャ直して 立ち上がった。 「晃太っ…」 乱れた制服のまま、千里が俺にしがみついてくる。 それを抱きとめながら、俺は千里の服を 直してやった。 「…大丈夫だよ千里」 何が大丈夫なのか…自分でも分からないまま 明らかな気休めを口にする。 タロウだったら “黙ってればいいのに どうして会うなんて言ったの?” なんて言うかな。 だって、週末会おうと誘われて 上手い嘘が思い浮かばなかったんだ。 変な嘘をついて過去、2度もそれがバレている。 後をつけるなんて真似、もうさせたくない。 信じたい人を疑ってつけ回すなんて 辛いに決まってるんだ。 だったらはっきり言ってしまおうと思った。 千里だって、このままずっと俺とタロウが 会わないで終わるなんて思ってないはずだ。 だったら正直に伝えたかった。 せめて、千里に嘘はつかないと そう思ってほしかった。 自己満足だけど。 「晃太…来週はさ、俺のために空けてよ」 千里が鼻をすすりながら言った 俺の首にしがみついたままで…。 「うん、約束!」 「絶対な?」 「うん、あ、俺さ千里と行きたいとこあるんだ」 「……え、俺と?……どこ?」 千里が少し顔を上げた。 「まだ言わない!月曜に学校でな」 「……… うん、学校で…」 少しだけ冷静さを取り戻した千里を見て ホッとした。 ごまかそうとして適当な事を言った訳じゃない。 本当に千里と行きたい所があった。 「早く月曜になればいいのに…」 そう呟く千里の頭を黙って撫でた。 誰かに見られることもなく、無事 駅の外に 出られた俺たちを、キンキンに冷えた冬の 空気が吹き付ける。 「うぅぅ 寒い!!」 お互い鼻までマフラーの中に潜って震えた。 「こんな寒い日に外のトイレでエッチ しちゃうとか、俺たちイカれてんね!」 千里がガチガチ歯を鳴らしながら笑う。

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