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22. 2
「そろそろこれやろ~」
タロウがパントリーから手持ち花火を出してくる。
「俺、こんな真冬にやるの始めて」
「そうなの?」
「っていうか、手持ち花火って子供の頃
やった記憶しかない」
「へぇ~
あ、なんかドキドキしてきた」
手持ち花火ぐらいでドキドキできるなんて
石器時代の人間だろうか。
なんでもいいけど、胸を手のひらで押さえて
落ち着こうとしている姿はかわいい。
タロウのマンションにはルーフバルコニーが
あって、無機質なコンクリートの何もない
空間だけど、花火をするにはピッタリだった。
おそらく花火なんてやるのはルール違反だろうけど
家主がタロウだから怖いものはない。
バケツや ろうそくを用意してベランダに出る。
「さっぶ!!」
幸いほとんど風は吹いてなかったけど
大気はキンキンに冷えていた。
「晃太やって」
「は?俺?」
やりたがってたのは自分のクセに
俺に花火を押し付けてくる。
「だって、火が出るんでしょ?怖いから
とりあえず晃太やって」
「しょうがねぇなぁ」
ろうそくに火を灯して、そこから火を点ける。
だけど、季節のせいか、くすぶるだけでなかなか
花火にならない。
「これダメかも、湿気ってる…」
つかなかった花火をタロウに持たせて
別のを取り出す。
その間にタロウがおっかなびっくり
不発だった花火をろうそくで炙った。
「ホントだつかない…」
「ちょっと乾燥させて試すと ついたり
するらしいよ」
話してる間に俺が新しく持ってきた花火に
やっと火がついて、シューッ!と音とともに
派手な色のついた花火が吹き出した。
タロウは自分の持っていた花火から
火が出たと勘違いして、ギャッ!と声を上げて
それを投げ捨てた。
「いや、タロウ!こっちだから!
ホラ持って」
「そっちかっ! ビックリした!
っていうかソレ、思ってたのと違う!怖い!」
そうこうしている間に一本目の花火は
プスプスと消えてしまった。
あまりの短さにタロウがキョトンと
漂う煙を見つめた。
俺はそんなタロウの表情を見て思わず吹き出して
大声で笑った。
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