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22. 3
「タロウ顔!キョトンとしすぎ!」
「え、だって…終わったの?
今ので成功?」
「たぶん今のは成功。大体あんな感じだよ」
俺は笑いながらもう1本に火をつける
今度はすぐに点火して、続けてもう一本。
タロウに1本渡すと、かなり腰はひけていたものの
怖くないということは分かったらしい。
「熱くないね。煙いけど」
「子供ができるんだから熱いわけないじゃん」
俺が言うと、そっか、と納得した顔で頷く。
そこからは自分でも火をつけられるようになり
どんどん本数を減らせた。
両手に持ってはしゃいだり
火の灯っているわずかな時間
その輝きに見とれたり…。
タロウは花火以上に色んな表情を見せて
俺はタロウを見てる方が楽しかった。
「そのゴミみたいなのも花火?」
タロウが線香花火を見て言った。
「ゴミって、ヒドイ言われよう
……確かにゴミっぽいか…
でも、俺は これ一番好きだなぁ」
言いながら火を灯して、パチパチとした
音が出始める頃、タロウにそっと渡した。
「これは振り回しちゃダメだよ」
「うん」
控えめに火花をちらして、ほんの数秒でポタリと
落ちる。
その様子を二人で静かに眺めた。
自然としゃがみこみ、肩がくっつくくらい
寄り添う。
「かわいいね、空の花火の子供みたい」
「そうだね…冬やるのも悪くないね」
「うん! 晃太と花火見れて良かった…」
「また夏になったらしようよ」
「………」
タロウは何も応えず、儚く光る花火を
優しい目で見つめてる。
その横顔があんまり穏やかで綺麗で
胸の奥がザワついてきた。
「去年一緒に見れなかったし、今年こそは
花火大会もここで見よう」
「……見ない」
「……え?」
「…俺、やっぱり死神やめたいんだ」
二人の線香花火がほぼ同時に落ちて
静けさに包まれる。
タロウはガサガサ袋から新しい花火を取り出した。
「どういう意味?」
俺の言葉を無視して、はい、と俺にも
新しい花火を手渡す。
「居なくならないって、言ったよっ」
「突然、黙って居なくなったりしないって
意味だよ」
タロウが困ったような顔で笑った。
「別に晃太の気が済むまで付き合っても
いいかなって思ってたけど
やっぱり、時間を無駄にしたくないって
思ったんだ」
「無駄…!?」
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