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23. 5
そして、その日がやって来た。
慣れた様子で男とホテルに入ってすぐに
少年は男に軽く殴られ、ベッドに突き飛ばされた。
少年は驚いたものの、ちょっと乱暴な客だな…。
くらいにしか思ってなかっただろう。
シャツを破かれ、ズボンも下着も中途半端に
ずらされただけで、男はいきなり少年の中に
自身を突っ込んだ。
痛いっ!と彼は叫んだけれど、男は聞く耳を持たず
腰を揺らしながら、少年の唇を舐めようとした。
それを彼が顔を背けて拒否した。
きっとそれがスイッチだった。
男は容赦ない力で華奢な少年の首を絞め上げ
顔をなぐり、膝で体を押さえつけた。
少年は力一杯抵抗し、失禁して暴れたけれど
やがて意識を失った。
死神は全てを見ていた。
胸がずきずき痛んで、さっさとこの獣を
少年から引き剥がしたくて仕方がなかった。
そしてついに、フワリと影のような物が
彼から立ち上り、それが少しずつ集合して
霊体になり、死神の横に現れた。
死神の存在に気づかず、呆然と自分が犯される
様子を見下ろす。
彼はどこか、あの事故の時を思い出させる冷静さで
取り乱すこともなく、自分の死を受け入れようと
していた。
だから思わず言ってしまった。
「助けてやろうか?」
彼は静かに死神を見た。
死神が待ち焦がれた瞬間だった。
待ち望んだのは、もちろん少年の死ではない。
彼の瞳が、ついに死神を見つけたのだ。
「え、ダレ!?」
あの少年が自分を見てる。動揺してる!
嬉しすぎて胸が高鳴って
どうにかなりそうだった。
やっと会えた…!
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