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24. 果てなく遠い未来
「絵馬どうする?」
「書くでしょ~」
千里と2人学業成就で有名な神社を訪れていた。
お参りをして、お守りを買い、1カ月後に迫った
大学受験の合格を願った。
「これでやることは全部やったな~」
「おぉ、後は運を天に任せて、やるしかないな」
「じゃ、久々にラブホでも行っとく?」
「試験終るまで禁欲って言ったの千里じゃん」
「…そうだけど、ストレスはよくないし
やる気が出るかなって思って!」
「ハイハイ」
俺は子供をあやすみたいに千里の頭を
ポンポンと叩いた。
「……ホントに行かないの?」
千里の顔が子供みたいにしょんぼりする。
それを見て俺は思わず吹き出した。
「そんなに行きたかったの?
冗談だよ行こうよ!ストレス発散ね!
ずっと会わないで頑張ったしね!」
千里とは小学校からの幼馴染みだ。
話さなくなった時期もあるけど
高校になって、俺が男相手にウリをしている事が
千里にバレ、なんやかんやあったのち、俺たちは
恋人になった。
千里は強引で、俺はなんだかんだと
引きずられ、操られている。良い意味で。
大学もそうだ。最初は就職するつもりだったのに
一緒に行こうって千里が言うから…。
最終的に俺は大学を選択した。
後悔してる訳ではない。
進学を決断するにあたって、あらためて家族で
話す機会ができて、俺が勝手に感じていた
わだかまりが解けて、そのきっかけを作って
くれた千里に今はとても感謝している。
「テスト終わったらプチ旅行しない?」
泣いても笑っても終わった記念でさ!」
「そうだな、春 俺だけ泣いてるかもしれないしな
そしたら、旅行行こうぜって空気じゃ
なくなるもんな」
「不吉な事言うなよ~
俺だって何があるかなんて分かんないだろ」
千里が両手で顔を覆いながら言った。
「ゴメン、ゴメン受験生の禁句を
言ってしまった」
俺は笑いながら謝って、千里の首に
片腕を引っかけて、耳元で囁いた。
「今日は受験忘れて楽しも。
“休憩”じゃ足りないから、朝までね」
耳を赤くした千里が俺を見た。
「小悪魔めっ」
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