136 / 140

24. 2

“ 晃太、晃太、タロウって呼んで… ” 「タロウッ…」 手を伸ばして飛び起きた。 身体中冷や汗をかいてた。 隣で寝ていた千里が寝ぼけた顔で眉を寄せて 俺を見る。 「……ダレ?」 「…え、?俺、今何て言った?」 「……タロウ?」 「ウルトラマンかよ」 俺はベッドにもう一度寝転んだ。 「あ、ごまかした?」 千里がうつ伏せになって両ヒジをついて 俺の顔を除きこむ。 「何をごまかすのよ」 俺が笑っても千里は笑わなかった。 「浮気相手の名前なんじゃないの?」 「今どきそんな古風な名前のヤツいるかよ」 「………聞き間違えかな…?」 「そうじゃない?」 千里はまだ納得のいってない顔だったけど 俺が全く動揺してないのを見て、しぶしぶ 横になった。 名前や顔は覚えてないけど、俺は度々同じ相手と 千里には言えない悪い事をしている夢を見る。 それはとてもリアルで、その夢を見ているときは 夢と思えない。 夢を見ているときは、相手の顔も名前も覚えてる 気がするのに、目が覚めると、それが不思議と 思い出せなくなる。 ー タロウ…… 言われてみれば確かに そんな風に呼んでた気がする。 そして、これも毎回 同じなのだけど その相手はいつも最後には俺を置いて 何処かへ行ってしまう。 俺はその“タロウ”をいつも捕まえられず 目覚める。 その夢を見た直後は胸がつぶれそうなほど 苦しくて、時々リアルに泣いてたりした。 夢を思い出して胸が詰まりそうになり 俺は千里の胸に顔を擦りつけて 足を巻き付けた。 「千里もう1回しよ…」 千里が優しく笑って俺のおでこに キスをした。 「ん。しよ……」

ともだちにシェアしよう!