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24. 2
“ 晃太、晃太、タロウって呼んで… ”
「タロウッ…」
手を伸ばして飛び起きた。
身体中冷や汗をかいてた。
隣で寝ていた千里が寝ぼけた顔で眉を寄せて
俺を見る。
「……ダレ?」
「…え、?俺、今何て言った?」
「……タロウ?」
「ウルトラマンかよ」
俺はベッドにもう一度寝転んだ。
「あ、ごまかした?」
千里がうつ伏せになって両ヒジをついて
俺の顔を除きこむ。
「何をごまかすのよ」
俺が笑っても千里は笑わなかった。
「浮気相手の名前なんじゃないの?」
「今どきそんな古風な名前のヤツいるかよ」
「………聞き間違えかな…?」
「そうじゃない?」
千里はまだ納得のいってない顔だったけど
俺が全く動揺してないのを見て、しぶしぶ
横になった。
名前や顔は覚えてないけど、俺は度々同じ相手と
千里には言えない悪い事をしている夢を見る。
それはとてもリアルで、その夢を見ているときは
夢と思えない。
夢を見ているときは、相手の顔も名前も覚えてる
気がするのに、目が覚めると、それが不思議と
思い出せなくなる。
ー タロウ…… 言われてみれば確かに
そんな風に呼んでた気がする。
そして、これも毎回 同じなのだけど
その相手はいつも最後には俺を置いて
何処かへ行ってしまう。
俺はその“タロウ”をいつも捕まえられず
目覚める。
その夢を見た直後は胸がつぶれそうなほど
苦しくて、時々リアルに泣いてたりした。
夢を思い出して胸が詰まりそうになり
俺は千里の胸に顔を擦りつけて
足を巻き付けた。
「千里もう1回しよ…」
千里が優しく笑って俺のおでこに
キスをした。
「ん。しよ……」
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