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24. 3

その日は久しぶりにバイト先に顔を出した。 3年になってから、本格的に受験モードに 入るためにやめてしまったバイト。 勉強に煮詰まったり気分を変えたい時に 時々来て、マスターと話したり ラテを飲みながらカウンターで 居眠りしたりして さぁ、頑張ろう!と気合いを入れ直す 大切な場所になっていた。 その日も空いている席を借りてラテを飲み サービスでオヤツなんて出してもらいながら 勉強をしていた。 一段落ついたところで伸びをして、窓の外の 人の流れをぼんやり目で追い、ふと ポケットから小さな小さな巾着を出して 眺める。 鈴のようにコロンとしたフォルムで 元々はもっと白かった気がするのに 今ではずいぶん汚くなった。 これが何なのか分からないけど 俺はずっとこの “お守り”を肌身離さず持っている。 何となく、幼い頃に亡くした両親に 繋がる物なのかな?と思って ボロボロで汚くなっても捨てられない。 でもソロソロ布がヤバいかもしれない もう一回り大きな巾着でも用意して その中に大事にしまった方がいいかもしれない。 「そろそろバックに入れとくか…」 バックの中でもいいのに、ナゼか いつでもすぐに触れられる場所にないと 落ち着かなかった。 特にたちの悪い死者に出くわしてしまった時など 咄嗟にポケットに手を入れこれを握る。 そうすると不思議と安心して、以前だったら 体調が悪くなってしまう様な状況でも どうにかやり過ごすことができたのだ。 俺は その時何も考えず お守りに向かってフッと 息を吹きかけた。 なぜそんな事をしたのか全く分からない。 それが自然な流れのように、俺はそれを またポケットにしまった。 それから勉強に戻った俺の耳に、たよりない 小さな鳴き声が届いた。 最初は店内のBGMのように。 途中で急にその声が耳について 途切れ途切れのその声に耳をすました。 「……猫?」

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