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声に耳を澄ましながら、窓の外を覗いた。 確かに時折小さな声が聞こえるのに 窓から見える場所には猫の姿なんてなかった。 聞こえてくる声は、明らかに仔猫の声だ。 何故だか気になって仕方なくなり、荷物など そのままで、店の外に出た。 店の目の前は車数台が置ける 駐車スペースとなっている。 今も店内の客の車が1台だけ停められていた。 隣の建物との隙間や、植栽の間を見ても 姿はない。 その時また小さな声が俺を呼んだ。 しゃがみこんで車の下を覗くと 探していた声の主がいた。 突然現れた俺の姿に驚いて、小さな体を 一層小さく丸めて固まり、大きな目で こちらを見た。 それは本当に小さな黒い固まりだった。 「おいで…」 手を伸ばして呼んでみると、ビクッと体を 震えさせて、一瞬逃げる素振りをする。 ー のら猫かな?親とはぐれたか? このままこの小さな仔猫が、こんな寒空の下で 1人で生きていけるとは思えない。 道路に飛び出したりしたら?カラスや別の 動物に狙われたら…? 「おいで、 大丈夫だよ」 優しく声をかけても動かない。 当たり前か、と、ため息をついた。 マスターに、何かエサになるものをもらって 来ようか…。 「おいで…一緒に帰ろう」 何も考えずにその言葉を言った時 突然仔猫が頭を上げて、俺に向かって 車の下から駆け出してきた。 伸ばした手のひらに自ら飛び込んで来るように。 抱き上げると、大きな瞳が俺を見つめて 小さく鳴き声を上げた。 子猫はまだ俺の両手にすっぽり隠れてしまうほど 小さかった。 きっと生まれて1月と経っていないだろう。 「可愛いなぁ、おまえ…。 俺と帰りたいの?」 儚く愛らしい姿に1発でやられた俺は すっかり猫なで声で話しかけた。 それに応えるように仔猫がミー、と鳴く。 「よしよし、いい子だな」 仔猫は俺が何かいう度に、まるで会話でも しているようにミーと鳴いた。 指先で顔まわりを撫でると目を閉じて 気持ちよさそうに受け入れる。 ー か、可愛すぎる!

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