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第23話 無邪気
僕は無邪気を装った。
何も見ていない、そして何も気づいていないふりをした。
ナイフも弓矢もアーマーも、結局レンに選んでもらった。
付け耳をつけ、アーマーを装備し、ナイフを腰に差し、弓を背中に背負い、僕は大仰に喜んだ。
ドルードの店を出て、人気のない路地を歩きながら、僕は建物の硝子に自分の尖り耳姿をうつして、ニコニコ笑った。
「すごい、本当にすごいよ、どう見ても僕、現地人!」
そしてナイフをぶんと振ってみた。
「かっこいい!それにとても軽い。軽いのにいかにも本物ーって感じする。さすが異世界、こんなのあっちの世界じゃ見たことないよ、なんかこれ持っただけで強くなれる気がする!アーマーも超かっこいい、まじでゲームじゃん!」
レンはそんな僕を嬉しそうに眺めて笑った。
「大げさだな。自分の指切るなよ」
「大丈夫だよー」
僕は内心、胸が潰れそうだった。
僕のためにあんなことしてくれたのに、嫌味ひとつ言わない。
ただ買ってもらっただけの、何もしてない僕なんかに、そんな風に優しく笑ってくれて。
ああ駄目だ、我慢してたのに、泣きたくなってしまう。
駄目だ、無邪気を装うんだ僕は。
急にうつむいて黙った僕に、レンが首を傾げる。
「どうした?」
「な、なんでもない!」
僕は涙を押し殺して言う。
「ありがとう、レン」
「なんだよ、さっきも言ったじゃんかそれ」
「何度でも言いたいんだ。レン、本当にありがとう」
レンは照れたような顔をして、僕の頭を撫でた。
「そんな喜んでもらえて、俺もうれしいよ」
泣かない、泣かない。僕は必死に涙をこらえた。
そしてレンを見上げて、満面の笑みを浮かべた。
「……」
気のせいだろうか?今、レンの頬が赤らんだ気がした。
そ、そんなわけないか。きっと僕の勘違いだろう。
「じゃ、じゃあ、用も済んだし帰るか。あんま長居も危険だしな」
レンは何故だか気恥ずかしそうに視線をそらしながら言った。
僕はうなずく。
「うん、帰ろう、僕達の家に!」
レンは目を見開いた。
僕は、はっと気づいて頭をかいた。
「ごめん、居候の分際で!えっと、レンの家!」
レンは慌てたように首を振った。そして 顔をほころばす。
「いや、俺達の家、でいい」
それはレンが今まで見せた中で、一番の笑顔だった。
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