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第29話 転生者狩り(1) ※

 僕たちは森の中の隠れ家に戻ってきた。 「じゃあ俺はウマをしまってくる」 「分かった!」  レンはウマをひいて馬小屋に行き、僕は家の扉を開けた。  ガラクタで散らかった、家具もない殺風景な室内を見回す。  それなりに思い出深いし離れるのはちょっと寂しいな、一週間しか暮らしてないけど。  なんてことを思いながら、扉を閉めた瞬間。  背後から獣の吠え声がふってきた。  そして背中に重いものがのし掛かり、僕は倒れる。爪を立てられる痛みと共に。 「やっぱりいたぞ、ここは転生者の隠れ家だ!」 「でかしたぞフェンリル!」  獣にのしかかられうつ伏せに倒れた僕の耳に、二人の男の声が聞こえた。  フェンリル使いのハンター!  待ち伏せされていたのだ。  首筋に獣特有の臭い息が吐きかけられた。 「どけフェンリル、傷つけるなよ!」  フェンリルが僕の上からどき、代わりに男たちが僕を押さえつけた。僕の両手が後ろ手に縛られる。  僕は恐怖に顔を引きつらせ、男たちを見た。  額に二本の角を生やした長髪の男と、耳のとんがった坊主頭の男。その傍に、銀色の狼。ライオンのたてがみのようなふさふさの毛を全身に生やした、美しい獣。  坊主頭の方が僕の髪の毛を掴んで顔を覗き込んだ。 「おお、こいつは上玉だ。転生者はどいつもお綺麗な顔してやがるが、こいつは相当上位だな、いい値がつく。ちょっと味見してみるか?」  色欲にギラつく目で見られ、鳥肌がたった。 「おい、やめろ。転生者狩りの鉄則を忘れたか。捕獲以外のことをするな、だ」  角の長髪がたしなめるように言った。  その時、フェンリルが扉に向かってウォンウォンと吠え立てた。  長髪がにやりと笑う。 「ほほう、もう一人いるようだ、転生者が。おい扉の向こうのお前、そこで何をしている?仲間を助けようと剣でも構えていたか?残念だったな、急襲は失敗だぞ」  扉の向こうにいるだろうレンは、何も答えない。  ただフェンリルがうるさく吠え立てている。  坊主頭が立ち上がった。 「ふん、こちらに扉を開けさせようってか。ああ開けてやろうじゃねえか」  坊主男は腰からナイフを抜いて持ち、扉の脇にぴったり張り付き、ドアノブに手をかけた。 「ほら開けてやるよ、来な転生者ちゃん!」  坊主男はドアを乱暴に開けた。入って来るレンの攻撃に備え、ナイフを前に構える。    レンはゆっくりと入って来た。そして扉脇で身構えている坊主男の前に、その姿を晒す。  坊主男はレンを見て、まなこを見開き、ごくりと喉を鳴らした。  レンは武器を持たず、上半身裸で、その胸の突起から白い雫を滴らせていた。  ツーと流れ落ちる一筋の白濁液とレンの顔を、坊主男は凝視した。 「こ、こいつも上玉だ、とんでもねえ美形じゃねえか……」  レンは妖艶な笑みを浮かべた。自らの乳首を指ではさみ、 「俺いま、『飢餓』状態なんだ。ねえおじさん、飢えた転生者としたこと、ある?」

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