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第31話 転生者狩り(3)

 レンはくっと笑った。 「エロかったぜ、お前の誘惑。ちょっと妬けたわ、このおっさんに」  僕は顔を赤らめた。妬けた? 「な、何言ってんだよレンこそすごかった……」 「あと、まだ終わってねえ。もう『一匹』残っている。静かーに殺したつもりだが、流石に主人を殺されたら気づくか?」  寝そべっていたフェンリルが体を持ち上げていた。  グルルっと唸り声をあげ、僕らを睨みつけている。  フェンリルはその口をくわっと開き、僕らに襲い掛かろうと身を屈める。  レンがすっと手を掲げて言った。 「テイム・レベル4、『ザイ』」  レンの手のひらから緑色の光が放たれた。  緑の光を浴びて、フェンリルの表情が急に柔らかくなった。  そしてそのまま腰を落とし、おすわりの体勢になる。  僕はびっくりし、レンも自分で驚いたように口を丸めた。 「お、フェンリルに効いたよ、俺のおすわり魔法。レベル4なのに。やっぱ俺、才能あるかも」 「す、すごすぎるよレン!魔法なんて使えたの!?」 「うん、なんでか知らんが、使える。普通の転生者は使えねえんだが」  言いながらレンは僕の両手のロープをナイフで切ってくれた。 「こっちの角が生えてる長髪がフェンリルの主人なんだ?よく分かったね」 「ああ、有角人種は魔法に長けてるからな。フェンリルを手懐けるレベルの魔法持ってそうなのはこっちだろうと思った」  そしてレンはおすわりしているフェンリルに向き合って言った。 「じゃ殺すか」 「えっ!?かわいそうじゃない!?」  思わず言ってしまった僕の言葉に、レンが呆れ声を出す。 「何言ってんだ、俺たち転生者にとってこの世で最も厄介な存在だぜ、魔獣フェンリルは。この世界のフェンリル全てを抹殺したいくらいだ」 「あ、そ、そうだよね。ごめん家で犬飼ってたからつい……」  僕は悲しい気持ちで、フェンリルを見た。  体は大きい、ライオンくらいはあるんじゃないだろうか。  この大きさだけでも恐ろしいけど、目つきはそんなに怖くない。狼より犬っぽい気がした。  うう、なんて純粋な目なんだ。うちの柴犬のワン太を思い出してしまう!  と思ったら。 「くうう……ん」  と、レンを見つめて甘えるような声を出した。  うっ、とうろたえるレン。 「な、なんだその子犬みたいな声は、そんな声出すのかよフェンリルって」  僕は目が潤んでしまう。   「や、やっぱ無理だ!ワン太にしか見えない!」 「ワン太ってなんだよその安易な名前は……って、あ、あいつんちの犬の名前もワン太だったな……」  僕はどきりとした。え、まさか「ヨル」の犬の名前なんか覚えてくれてたの、レン?  フェンリルがのそりと起き上がり、レンに近づいた。でも攻撃する風じゃなくて、甘えるような感じで。  くんくんとレンの股間をかいだ。 「ちょっ、やめろって、おすわりっ」  動物に慣れない様子で腰がひけているレンの股間を、フェンリルがべろんと舐めた。 「うげっ!」  レンの顔が面白すぎて、僕は思わずふき出してしまう。  レンの股間をなめたフェンリルの目が、なぜだか急にとろんとした。  そして突然、くるりと腹をひっくり返して床に寝そべった。  その腹に、緑色に光る文様が浮かんで、数秒で消えた。  レンが息を飲んだ。  僕はなんだか分からなくて、目をぱちくりさせる。 「な、なに、今の光の模様みたいなの」 「魔獣が人間に服従したときに出るやつだ……」 「えっと、つまり?」  レンが参った、という風に額をおさえた。 「俺、こいつの飼い主になっちまった……」 「ええー!?」

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