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第45話 幻惑の森(6)

 僕達が飛び出した先は、土の上だった。  やっと花の内部から脱出できたのだ!  すっかり服は解けて、二人とも裸ん坊になっちゃったけど。  後ろを振り向くと、恐ろしく巨大な花がそびえていた。茎はなくて地面から直接花が生えている。  巨大な茎なしチューリップに見えないことも無い。けど、その内部構造はとてつもなく複雑怪奇。  僕はしみじみとつぶやいた。 「僕達の赤ちゃん、立派に育つといいねえ」 「いやただの植物系モンスターだけどな」 「レンがお母さんだね」 「ぶん殴るぞ」  ひえー。  と、そこで、僕はむちゃくちゃ大事なことを思い出した。 「ワン太っ!!」  ああどうしよう、ワン太はどうなったんだろう、まさかあのまま、妖樹的なものの養分に!? 「レン、ワン太を助けに行こう!」  レンはふむ、と顎をさすると、指を二本、口に入れて、ピーと口笛を吹いた。  すると。 「アオーーーーーーーン!」  ワン太の雄たけびが聞こえた!  しかも結構、近い場所から。  そしてガサガサっと音がして、木々の間から銀色に輝く立派なフェンリルが飛び出してきた。 「ワン太あああああああ!」  僕はワン太の首に腕をまわしてしがみつき、レンはワン太の頭をわしゃわしゃ撫でた。 「さすがフェンリル。植物系モンスターごときに負けなかったか。ウマは無事か?」 「ワウっ」  と短く答えるワン太。 「そっか、とっくに逃げて森を抜けたか、それでいい。出口んとこで待ってるかな」  す、すごい、レン、ワン太と会話してる!?そうか、魔獣を服従させると、意志の疎通もできるようになるんだ。  いいなあ、魔法。  その時、木々がなんだかざわめきだしたような気がした。  無音だった森に、葉擦れの音が拡がり始める。  レンが舌打ちした。 「騒ぎすぎた、森を起こしちまったな。ワン太、俺達二人、乗せて突っ走れるか?」 「ウオン!」  きりっとした顔で体勢を伏せるワン太。 「よし!乗れヨウ!」 「う、うんっ」  レンと僕はワン太の背中にまたがって、そのふっさふさの毛にしがみついた。  ワン太は地面を蹴って、走り出す。  森の木たちが枝や根っこを鞭のように僕達に振るってきた。  ワン太はそれらを見事に避けて走り抜ける。  突然盛り上がった根っこのハードルを大ジャンプで飛び越え、目の前に迫る丸太を噛み千切って粉砕し。  銀色の獣は、夢のように綺麗で悪夢のように恐ろしい森を、悠々と駆け抜けて行った。

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