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第2話

何部屋もあるはずのお屋敷の中、その部屋の多くはご両親の物があるとか何とかで… 俺の荷物は、うちの実家がすっぽりと入ってしまうような広いウォークインクローゼットへ置かしてもらう。その中からよく使うものだけを、亜嵐と二人で使う寝室へ運び入れた… 粗方片付くと、どっと疲れが押し寄せてくる。 「ふぅ。荷物が少ないって言っても、結構疲れたな?なぁ、亜嵐もちょっと休もうぜ?」 俺は大きなベッドへと飛び込んだ。 丁度良い固さのマットレスの上でゴロゴロしていると、ふと甘ったるい香りが漂ってくる… 「ん?めっちゃ良い匂い…」 次第に強くなっていく香りに、少し頭がぼーっとしてきた… 「亜嵐の香水?…ってかめっちゃ濃くなってきたけど?…何?」 「…二琥、ごめん」 そう言って振り返った亜嵐は、俺のよく知る亜嵐なのだけど… 何処か雰囲気が違っていた… 「二琥が慣れるまで待とうと思って我慢してたのに…」 「二人っきりだって…結婚出来たんだって実感したら…俺…」 ベッドの上に亜嵐が乗ると、より強い香りが立ち込める。その、むせ返るような甘い香りにクラクラして…何も考えたくない様な気分になった… 「…ごめん…二琥にまだ話して無い事があるんだ…」 亜嵐は優しく俺の頬に触れると、切な気な瞳の中心が赤く変わっている… 「亜嵐?お前、その目…?どうしたの?」 「二琥…俺…人間じゃないんだ」 「…はぁ?」 カラダの力が抜けて、上手く声が出ない… 「…後でちゃんと話すから…俺…もう…限界…」 亜嵐の香りが目の前で甘く広がると、その薄い唇が俺の唇を塞いだ。 「…んっ…」 亜嵐の舌はさも当たり前の様に俺の唇を割り、舌を絡めとる。甘い香りと、痺れるような快感が喉の奥へと侵入してきた… 「…っんふ…んー…」 初めての感覚に、自分の意志に反した声が漏れてしまう… 亜嵐の細く骨ばった指が、脇腹を伝って俺の服を捲りあげると…露になった肌がひんやりとした… 「二琥可愛い…俺…もう止めらんねー…ごめん…気持ち良くするから…許してな?」 亜嵐の指先は俺の胸の周りを優しく撫でて、その先端を時折触る…先端を指で弾かれる度に思わず腰が跳ね…遠く離れた下半身へ熱が集まる… 「…あっ…やめっ…」 抵抗したくても、カラダに力が入らない… 抗えない快感が、切ない声となって漏れるだけだった… 「二琥…乳首気持ち良い?…固くなってる…ここ?触って欲しいの?」 亜嵐の指に撫でまわされ、固くなった乳首の先端は、その指に弾かれるのを待っていた… その期待を叶えず、弄ぶ様に動く指に…思わずカラダを捩ってその指を欲しがってしまう… 「…っん…亜嵐っ…」 「ん?二琥?辛いの?どうして欲しい?」 「…なんだよっ…いやだっ…」 「じゃあ、止めようか?」 「……っく…」 亜嵐は少しからかうように俺の顔を覗き込む…その間も動き続ける指先は、悪戯に触って欲しい所を避け…肌の上に僅かに触れる距離で動く… そのまま亜嵐は俺の耳もとに唇を近付け少し荒い吐息がかかると、僅かに耳たぶに触れられた途端全身にビリビリとした感覚が流れ、足の指に力が入った… 「…二琥?…どうする…?」 意地悪に、至極優しく囁かれると…恥ずかしさを越える欲望が全身を走る… 「んあっ…ちゃんと…触って?」 「どこを?…教えて?」 「…っく…乳首っ…んっ…先端っ…触って…ほしい…」 押し寄せる快感に、もう抗えなくなっていた… 「ごめんね…二琥可愛くて…意地悪した…もっと気持ち良い事教えてあげる…」 優しく囁いた亜嵐は、その口で俺の乳首を咥えると、固い先端を舌先で転がす… 「んーっ…んあぁっ」 更なる快感が全身に走り…熱くはち切れそうな下半身を浮かして、潤んできた目で亜嵐を見つめるしか出来なくなっていた… 「こっちも…もう辛いよね?」 亜嵐の手は肌を滑り、俺の下半身へ辿り着くと…熱り立つソレを容易く取り出し解放した… 下半身で露になっているソノ先っぽは、待ちわびる様に濡れ始めているのがわかる… 亜嵐がその液体を指先で広げると…俺のモノはその感触に反応して更に肥大する… その様子を触感で確認したのか、亜嵐は徐に頭を上げた… その途端、咽びかえる程甘くて淫靡な香りが二人の体温に熱せられ…より甘く辺りに充満していた… 「じゃあ…二琥の精液貰うね…」 亜嵐は俺の下半身へ唇を滑らせると、はち切れそうなソレを咥えた… そのまま舌先がスジを這い…根元から先っぽ迄…味わうように動く… 「……っ…」 あまりの快感に…腰が浮き上がり、声になら無い吐息が漏れる… 「…じゅっ…じゅぷっ…」 亜嵐の唾液と俺の液体の混ざりあった音が、亜嵐の頭が上下する度に、唇の間で鳴っていた…その音が次第に早くなると…抑えきれない程の快感が、下半身へ集中する… 「ダメっ!……出るっ!」 力を振り絞りそう叫んだが… 亜嵐は動きを一層早め… その口に咥えられたまま、俺の腰は激しく突き上がると…あえなく果ててしまった… ビクン…ビクン…とひくつきながら、白濁の液体が亜嵐の口内へ放たれていく… 俺は退いていく余韻にすら…まだ快感を感じてしまっていた… 「…亜嵐…ごめん…俺…」 うつ向く亜嵐を窺うと… 亜嵐は恍惚とした表情で、俺が放った白濁の液体を余す事無く飲み込んでいた… 「二琥…ありがとう…美味しい…ヤバイよ、全然違う!」 「……っえ?」 「っ俺…人間じゃないって…言っただろ?」 「俺の…家系…本当は淫魔なんだ…」 「インマって…?」 まだ回復しない思考と初めて耳にする単語に、充てる漢字すら思い付かない… 理解する事を諦めた俺は、まだ歪んで見える白い天井を眺めていた… …… … 快感の余韻にそのまま微睡んでいると… 亜嵐も隣に寝転んできた… 「んで…亜嵐は結局何者なんだよ?」 「…俺は…淫魔と人間のクォーター?かな?」 「…ふーん。んで?そのインマって、俺知らないんだけど?」 「色んな種族がいるからな…?インキュバスとかサキュバスとか…俺はインキュバスに近いか?」 「それって…つまり何?」 「うーん…?ドラキュラが人間の血を吸うみたいに…人間の精気…俺の場合は…精液を食事にしてるって言えば分かりやすいか?エッチなドラキュラ的な?」 「何か…それ…」 「違うか?まぁ、大きく括れば悪魔系だな!」 「は?悪魔…?」 「二琥ビビってる?…やっぱビビるよな?俺んちは命取ったりしないから、大丈夫だよ!」 「現代悪魔はめっちゃ細分化してるし、人間が想像するのとかけ離れた奴らが全然いるよ?」 「…想像つかないな?」 「まあ、そうだろうな…。俺の家系…ってか種族は、人間と共栄してきた。俺みたいに人の血が混じっても、王座に就けるくらいだからな?」 そう言って微笑む横顔は、昔から良く知る亜嵐なのだが… 良く見ると色素の薄い髪は、チラチラと銀色に輝き…その頭頂部には小さな2つの角が見え隠れしている。 瞳の中心はまだ赤みを残していたけど…徐々にいつもの灰色がかった色に戻ってきた… 咽びかえる程の香りがいつの間にか落ち着き、俺は意識がはっきりとしてきた事に気が付く… 情けなく露呈されている自分のカラダに気付いた俺は、急に恥ずかしさを感じてそそくさと服を着直した。 「…ってことは亜嵐の両親、本当は魔界とかにいる系?」 「いんや。両親は本当にカナダに居るよ。」 「魔界にいるのはじーちゃんだけ。」 「あっ、そうなんだ…じーちゃんだけかぁ……って、えっ?」 「魔界とかマジであんの?」 話を適当に合わせただけなのに、亜嵐の返答はさも当たり前かのように返って来る。 「…俺も魔界に行ったりしなきゃダメ?」 地獄とか、悪魔とか、そういった類いを… できる限り思い出すが… とても馴染めるとは思えなかった。 「ふはっ…二琥大丈夫?きっと二琥の想像よりかは、怖くないって…」 「想像よりかって…怖いんだけど…」 「大丈夫大丈夫♪すぐ慣れるから♪」 という事は、俺は彼方に行かなければいけないのだろう… 「それに…っせ…いえきが食事って…」 考えを巡らせているうち…亜嵐の恍惚とした表情を思い出し、思わず両手で顔を隠した。 快感に身を任せ放ってしまった俺の精液を…あんな顔で飲干すなんて… 「あっ!二琥、何思い出したんだよ?」 ニヤニヤとした亜嵐の顔は、俺の良く知る姿にすっかり戻っていた… 「っていうか!こんな普通の俺と結婚する事が、亜嵐の種族?の王座ってのに影響するの?…意味わかんない」 「くはっ…そうだよな?ちゃんと説明まだなのに頂いちゃって…くくっ…ごめんごめん」 「っく…ホントだよっ!」 「ちょいと長くなるけど、聞いて?」 「お…おう。」 亜嵐はベッドの上で座り直して姿勢を正したので、俺もつられて姿勢を正した…

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