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第3話

「俺のじーちゃん、王様なの」 「…うん…そうなんだよな…」 そんなような事をさっき聞いた気がしていたが、改めて聞くと現実味が無かった… 「俺の種族は人間で言うところの第二次性徴期が来たら、人間の精液を摂取していかないと魔力が無くなってくのね?」 「え…?そしたら…死ぬのか?」 「いんや、魔力が尽きたら完全に人間になるだけ。…あっちでは人間落ちって、白い目で見られっけど…俺らは死なない」 「なんだ…じゃあ別に、ここで暮らせば良くね?」 「うーん。俺の場合は跡取りだし…ね?」 「そういうもん?…それで?」 「逆に、沢山摂取できればより強い魔力を得られる。その中でも女性経験のない…まぁ、童貞の精液が一番魔力を高められて…」 「じゃあ亜嵐は俺が童貞だったから結婚したかったってこと?じゃあ別に俺じゃなくてもっ…」 「まあまあ、聞いて?王族ってのはさ、より高い魔力を持ってないといけない訳で…それには更に条件があるんだ…」 「条件?それに俺が当てはまった…?」 「そーゆーこと」 「どんな条件なんだよ?」 「ふはっ…ちょっと照れるなぁ…」 「なんだよ?ここまできて、もう照れる事なんてねーよ」 「…初恋相手」 「…っえ?」 少しうつ向きながら呟いた亜嵐の言葉を思わず聞き返す。 「特別な、そりゃもう特級の精液って純潔の初恋相手のやつなんだよ。その相手と契約…結婚すると、俺の魔力の最高値が無くなる」 「…?んー?」 「うーん…?底無しの魔力を扱える様になるから、摂取すればするほど強くなるって感じ?でわかる?」 ここ最近、日本語が俺の理解を超えてくる… 「まず俺が男に初恋をするのが大前提で…」 「…んへっ?」 「そんで、その相手が童貞のまま18歳になる」 「…ふーん?」 確かに俺は、童貞のまま3月に18歳になったけど?…初恋…相手? 「そこで、契約…こっちで言う結婚…だけど…」 語尾を誤魔化す亜嵐を訝しげに見つめてみたが、亜嵐は気にせず続ける事にしたらしい… 「とにかく二琥がこうして結婚してくれたから、俺は王座に就けるんだし♪」 「それに!初恋相手の精液って格別に美味いとは聞いてたけど…まさか、あんなに美味いとは…」 亜嵐は思い出すように恍惚とした表情を浮かべると…ふわっと甘い香りが漂う… 急に恥ずかしさが甦ったが、俺は何事もない振りをした… 「ちょっと…待って…色々わかんないんだけど…初恋って…亜嵐の初恋相手が俺…?」 「そうだよ♪幼稚園の時から二琥が好き♪」 思いもよらず、俺の初恋は相思相愛だったらしい… 「…って、亜嵐は彼女いたりしたじゃん?」 「俺は誰と付き合っても別に害は無いから♪フェイクだし好きで付き合ってた訳じゃないけど…」 「フェイクって?何のために…?」 「二琥の…ためかな?」 「っえ?」 「無理やり奪っちゃっても良かったんだけど…俺、二琥には幸せになって欲しかったから…誰かと付き合った二琥が童貞捨てれたら、王座も二琥も諦めようかと…」 「それに俺の気持ち知ったら…二琥は優しいから…色んな事考えて困るだろ…?だから…俺が二琥の事を好きな事は隠しておこうかなって…何か照れるな?」 「照れる所じゃねぇ!っつか幸せにって…まだこの先もあったかもしんないじゃんか?」 「だって…二琥…モテないじゃん…だから、もういっかな?って♪それに、こんな条件揃うなんて奇跡じゃん?運命的じゃね?」 「っつ…モテなくて悪かったな…まぁ、もう結婚するって決めたんだ。…そうだ…」 何か辛いが、そう自分に言い聞かせる… 「あっ!亜嵐の父さんが跡を継がなかったのって、その条件に関係あるってこと?」 「…そう。父さんは人間の女の子…つまり母さんが初恋で、その時点で跡取り候補から離脱した…それに初恋が実って精液を摂取するのも止めちゃって…今は完全に人間だよ…」 「…人間落ち?」 「まぁ。あっちでは色々言われてる。跡取り候補だったんだし余計だよな?だから、俺の初恋を知ってじーちゃんは大喜びだったよ…世襲が途切れない可能性が出たんだからな…」 「俺の知らない所で、亜嵐も大変だったんだな…」 「んなことねーよ?ずっと二琥の側に居て、めっちゃ幸せ♪」 嬉しそう微笑む亜嵐に、不覚にもきゅんとしてしまう… 「そういえば、結婚ってさ…あっち…魔界で婚姻届みたいの出すの?あっ!俺、結婚式はイヤだぞ!」 「その事なんだけど…」 「なんだよ…?」 「こっち…人間界では、婚姻届とか結婚式とかじゃん?そんな感じの儀式があっちでもあるんだよね…」 「えっ?どんな…?」 「まあ、それは追々で大丈夫なんだけど…とりま、王座に就くための契約が必要で…」 「儀式?契約?って何すんだよ?」 「うーんと…口では何とも…」 「なんだよ?ここまで来たら、もう逃げねーけど……契約書?とかってちゃんと読まなきゃいけないって良く言うじゃんか?ちゃんと教えろよ」 「そうだよな…誤魔化せるもんでも無いもんな…」 そう言うと亜嵐は何処からか1枚の紙を取り出した… 「亜嵐?それ?どこから…?」 「まあまあ。大事な書類だから、ちゃんと読めよ?」 その書類はきちんと日本語で記してあり、あっという間に読み終わった… 人間界における婚姻関係 契約書兼誓約書 「一、夫( )が求める時に妻( )は精液を摂取されるのを拒んではいけない」 「一、この先妻( )は如何なる場合も夫( )以外へ精液を提供してはいけない」 この書面への自署と「契約」をもってこの婚姻関係を成立とし、その身体が朽ちるまでを契約期間とする。 また契約内容に違反した場合、魔界法に基づいた裁判によって罰せられる場合が在ることも合わせて承認したものとする。 「二琥?…どう?」 「どうって…」 精液の提供とか…魔界法?の裁判で…罰?とか… 怖くて亜嵐に確認する事が出来ない… 「…っく。でもこれにサインしないと、結婚…ってか…亜嵐が王様になれないんだろ?」 「うん…まぁ…」 申し訳なさそうにする亜嵐から、その紙を受け取る… 「このカッコに名前書けば良いのか?何か書くもん貸して?」 「えっ?二琥…大丈夫?良く読むって自分で…」 「言ったけど、亜嵐と結婚するって決めたからには…これは書くしか無いんだし…」 またしても自分に言い聞かせる様に、一気に契約書にサインをする… 「ほら?亜嵐が書いたら成立だよ」 その紙を亜嵐へ戻そうとすると、またあの甘ったるい香りが漂う… 「二琥…ありがとう…俺…嬉しい」 亜嵐は目を潤ませ、真っ直ぐ見つめてくる… なんだか俺は、これで良かったんだと思えてきた… 「二琥の事、精一杯幸せにするから!」 「…うん。って…ッケホ…っく…亜嵐…この匂い…」 感動的な場面にそぐわない酷く甘い香りが強くなり…亜嵐の姿が妖艶に変化していく… 「ごめん…二琥。嬉しくて興奮したら…俺…」 「…この匂いって…何なの…?」 また気が遠くなるのを感じる… 「これね…人間には催淫効果があるんだって♪もちろん、媚薬どころの効果じゃ無いよ?…だって俺淫魔だし…」 「…っく…あぁ…」 「さっき極上の精液摂取しちゃったからね…効き過ぎちゃうかも?…二琥…このまま契約していい?」 「…っ契約って…さっき…したじゃん…?」 「書類はね?…書いてあったでしょ?契約をもってって…」 「え…?なに…?す…る?」 「契約書のサインと、淫魔の契約。つまり、セックスしたら成立だよ♪」 「…セッ…クスって…うわぁ…」 「大丈夫…二琥…さっきより絶対…気持ち良いから…」 「っちょっ…まだ…心の準備…」 「俺…もう待てないし…それに…二琥は…拒めないでしょ…?」 身体に力が入らない俺の服を…亜嵐はするすると脱がせていった…

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