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第4話 羞恥プレイ
「ん。あのね。俺、もう絶対臣ちゃんに隠し事しないって誓ったから、正直に言うけど……、インカム、切り忘れてたみたい」
「えっ……?」
途端に、臣の顔色がサアッと青ざめたかと思うと、パッと赤くなった。
「あ……っ、それ、って……」
「俺のこと、呼んでくれてたの、聞こえた。……ごめん。臣ちゃんのプライバシーに立ち入るのは心苦しいけど、でも正直、俺は嬉しかったよ」
刹那、臣の全身が、カアアッと朱に染まった。うなじや耳や、腕や指先までが、恥ずかしいことをしたと、紅葉の視覚に訴えかけていた。
「臣ちゃん、俺のこと想って、してくれたんだよね?」
「あ、あれ、は……」
「違うの?」
「……っ」
すると、恥ずかしさに耐えられなくなったのか、臣はインカムをしたまま、紅葉にふいと背を向けた。「愛の巣」A307号室での巣ごもり中、ベッドで、時には他の場所でも、あれだけ性的なことを紅葉と色々しているのに、恥じらいを捨てられないところが、いかにも臣らしい。どころか、あまり強引なセックスをすると、翌日、羞恥心からか、しばらく口を利いてくれなくなることも多い。
しかし、今回は、事故で臣の声を聞いてしまった紅葉も、臣と同じく恥ずかしい思いをしながら告白しているのだ。なのに、それが新たな揉め事の火種となりそうで、紅葉は焦りと苛立ちを覚えた。どうにかして、このわからずやに、気持ちを伝えたいという衝動が募る。
紅葉は、自分の心を探りながら、臣に向かって言葉を発した。
「あのさ、シャワーの中で俺のこと、呼んでくれてたの、すごく嬉しかった」
「……」
「臣ちゃんが俺のこと想ってくれてるってわかって、ときめいた」
「……」
「臣ちゃんの声、好きってなった」
「……」
「俺、臣ちゃんがパートナーで良かったよ。こんなに愛されてて……」
駄目押しのように言葉を繋いで、何とか臣を振り向かせようと紅葉が声を上げると、臣が頭に両手をやって、ガシガシとかき回しながら怒鳴った。
「あああもう! 言うな! 忘れろ!」
突然蹲ったかと思うと、大声を上げながら耳を塞いだ臣に、最初は驚いた紅葉だったが、やがて少しだけ嗜虐的な気分になった。紅葉の気分をいい意味で逆撫ですることができるのは、臣だけだ。臣にとってもそうでありたいと思うのは、アルファ特有の支配欲のせいだろうか。
「……どうして?」
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