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第7話 擬似セックス、しよ?
「エロい気持ちになったら、嫌……?」
そっと聞いてみると、臣が困惑した表情で、また少し顔を上げた。紅葉の言葉の意味をはかりかねているようだった。臣の黒い双眸が、ゆらゆらと迷いながら、紅葉を捉えるべきかどうか、考えているのがわかる。
「嫌っていうか……、困る」
考えあぐねた末に、チラッと紅葉と目を合わせる。
すぐに逸らされたその視線に、紅葉はじわりと心が温かくなった。臣が照れ屋なのは知っているし、照れながら紅葉を想ってくれているのも伝わってくる。真っ直ぐな紅葉相手に、照れが先行してちゃんと返せないゆえの、罪悪感までストレートに伝わってくるのがわかった。
臣も、きっとしたいのだ。
ガラス越しでなければ、きっと、もう、紅葉に触れているぐらいには。
心の底から可愛いと思った。その気持ちを伝えるには、臣を凌辱しないと、伝わらないぐらいに愛している。紅葉は自分の中に湧き上がる衝動に、名前を付けることを躊躇った。これを「臣」という名前にしてしまうことは、少し背徳的過ぎる気がするせいだった。
「ね、俺たち、擬似セックスしようか?」
「擬似……なに?」
紅葉が提案すると、臣は不審げな表情で、今度は目を合わせてきた。
絡まる視線に、情欲が滲んでいるのを確認できたことが、紅葉に一線を越えさせる決意を持たせた。
「エッチしようって言ったの。ここで、二人で、互いに見てる前で」
「え……っ、ち……?」
「うんそう。俺が、臣ちゃんのことを愛して、臣ちゃんが俺のことを愛するの」
「え……っ、でも……」
躊躇い、戸惑っている臣だが、紅葉はもう知ってしまっている。臣は、紅葉の言うことなら、ちゃんと聞いてくれるし、ちゃんとすると決めたことはしてくれることを。だから、説得の言葉に力が入った。
「できるよ。したいって思ったらきっと。でも可笑しいね? 発情期でもないのに、俺たち二人とも、……少なくとも俺は、死ぬほど臣ちゃんと愛し合いたいって思ってる」
「……っ」
乱れた黒髪の間から見える耳が、頬が、赤く染まってゆく。
臣の脳内で何が繰り広げられているのかを想像すると、紅葉は思わず口角が上がるのを止められなかった。
「臣ちゃん、好き。……しよ?」
「しよ、って……どうやって」
おずおずと臣が聞いてきた。紅葉は嬉しさを噛み締めながら、もうひと押しする。
「ん。触ってあげるから、俺の前でしてみせて? 俺も……さっきのお返しじゃないけど、臣ちゃんにしてるとこ、見せるね」
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